3話

 あれから早いもので1週間が経つ。5月も終わりに差し掛かり、季節は梅雨前の穏やかな陽気に包まれている。外は爽やかな風が吹き抜ける過ごしやすい時期だ。
 今日は土曜日だから大学の講義はない。夜からバイトがある以外、何も予定は入っていない。10時頃までベッドで惰眠を貪っていたけれど、愛犬のくまちゃんが「外に連れてって!」とせかしてくるので、一緒に公園周辺を散歩することにした。

 真っ白い毛がふわふわで、まるでお菓子の綿菓子みたいに可愛らしいくまちゃん。従順で甘え上手のマルチーズは、明るくて陽気で寂しん坊。家を空けることが多い私なのに、文句は言わないし吠えることも少ない。だから週末はバイト以外の予定を入れず、くまちゃんとずっと一緒に過ごすようにしてる。くまちゃんも私といられて嬉しそうだ。

 公園を過ぎ、川沿いの遊歩道を歩いていく。リードを持つ右手がくまちゃんの動きに合わせて軽やかに揺れる。周りに人の姿はほとんどいない。たまにランニングしてる人や、家族連れの人達とすれ違う程度。
 河川敷には緑の芝生が広がり、ところどころに白や黄色の花が咲いている。水面は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、波に揺られてカモの親子がのんびりと泳いでいる。見慣れた日常の風景が、今日も鮮やかに私の世界に広がっていた。

「……あれ?」

 ふと足を止める。前方から見覚えのある人物が歩いてきて目を見張った。

「卯月さん」
「……あ、やっぱり。朝霧だ」
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