2話

 結局抱いてもらえなかったし、今後の展望すら望めないような状況だけど、それでも、とても満たされた時間を過ごせた。卯月さんの人柄がとても良かったせいもある。それと美味しいご飯と楽しい会話のお陰かな。
 思いを巡らせながらアパートの近くまで辿り着く。ここでいいよと言って卯月さんを制止したら、彼は一瞬だけ不安げな顔をしたけれど。すぐに笑って手を振ってくれた。

「気をつけて帰れよ」
「うん!」

 そう言って別れた後も、卯月さんはしばらく手を振ってくれて。角を曲がる寸前まで見届けてくれるその気遣いに胸がくすぐったくる。
 アパートに戻ってからも、心の中は不思議と満たされたままだった。いつもなら寂しい夜も、今日は全く寂しくない。きっと卯月さんと過ごした時間が楽しかったせいだと思う。あの人と話していると、時間を忘れてしまうほど居心地がいい。

 心がずっと温かなまま、私はベッドへと潜り込んだ。一気に睡魔がやってきて、夢の世界へと落ちる寸前―――ふと、大事な事を思い出した。

「……彼女の存在訊くの、すっかり忘れてた……」
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