2話

「普通は好きな男とだけしたいだろ」
「そう?」
「俺はそうだけど」

 挽き肉が絡んだナスを口の中に放り込んだ後、卯月さんは強い口調でハッキリと告げた。

「俺は好きな女じゃないと抱けないし、抱かない」

 その一言に私は動きを止める。好きな人じゃないと抱けないと、あまりに当たり前なことを言われて、何故か胸の奥がちくりと疼いた。
 そっか、普通の人はそう考えるんだ。でも私にとってそれは「普通」じゃなかった。

「そういう考え方もあるよね」

 苦笑しながらフォークを動かす。動かしながら考えた。私のセフレ君達だって、別に「好きだから」私を抱いてるわけじゃない。タケくんがいい例だ。
 恋愛に興味が無いから、自由な関係が気楽だから、ひとりの夜は寂しいから。互いにメリットがあるから身体を重ねているだけの関係。それが私にとっての「普通」。

「あ、でも遺伝なのかも」
「遺伝?」
「お母さんがAV女優なの」

 卯月さんの目が点になった。

「あ、でも有名人じゃないよ。ほとんど企画系の撮影ばっかりで、単品で出たことないんだって」
「………」
「ちなみにお父さんがAV監督」
「………」
「お母さんの女優名とか聞く?」
「……いや、いい」

 はあ、とため息をついて、卯月さんが天井を仰ぐ。

「俺に抱かれたいって言ってたけど、もう諦めたのか?」
「諦めてないけど……」

 でも今はそんな気分じゃない。卯月さんの好みの基準に、私はまだ達していないと分かった以上、彼に抱かれたい気持ちは揺らいでいた。
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