2話

「朝霧さ、武術やってる?」
「え?」
「歩き方とか立ち姿見て思ったんだけど。朝霧の姿勢、すごく綺麗だから」
「……!」

 胸がドキンと高鳴る。彼が私の姿勢に興味を持ってくれた事実に嬉しさが込み上げた。だって誰もそんなこと言わない。私に近づいてくる男の子達は、みんな容姿に惹かれてくる子ばかりだったから。

「なんで? なんで気づいたの?」
「なんでって、一目見てわかるだろ。腰の据わった姿勢っていうのか? 重心が安定してる。令和ギャルには出来ない動きだなって」
「ギャルじゃないよ! それに私が武術を学んでるなんて、見た目で誰も気づかないし」
「それは朝霧の外見しか見てないからだろ」

 きっぱりと断言される。容姿ばかり褒められることが常だったから、違う視点からそんな風に言われると嬉しくて仕方がない。武道を学べたことは私の誇りでもあるから、そんな自分を認めてもらえたような気がして内心舞い上がってしまう。

「何習ってたの?」
「剣道と柔道。あと護身術教室にも通ってたよ!」
「すげぇじゃん。納得だわ。武道やってると姿勢に表れるしな」
「1人暮らし始める時に辞めちゃったけどね。だから最近は体が鈍ってるかも」

 にこにこと笑顔で語る私を、卯月さんは物珍しいものを見るような目で見つめてくる。

「というかさ」
「なあに?」
「朝霧って、前からそんな感じなのか?」
「どんな感じ?」
「男なら誰でもいいから抱かれたい、みたいな」
「うーん……誰でもってわけじゃないけど」

 唸りながらナポリタンを口に運ぶと、また絶妙な味が舌を喜ばせた。うん、おいしい。
 卯月さん特製の料理にすっかり夢中になっている私を、複雑そうな顔つきで彼は私を眺めている。
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