2話

「朝霧は……大学生で合ってる?」
「うん、3年。今月で21になったよ」
「若いな」
「若いよ? ピチピチだよ? 抱きたくなった?」
「ならねぇよ」

 冗談めかして言うと、彼は呆れつつもまた笑う。最初のギスギスした空気はすっかり溶けてなくなって、今は肩肘張らずに話せる仲みたいになっている。打ち解けてから、卯月さんは笑顔が多い人なんだなあ、と知った。私が何か言う度に、ずっと隣で笑ってくれる。冷たい雰囲気は第一印象だけで、本来はノリのいいお兄さんなのかもしれない。

 会話の合間に卵を割り、卯月さんがそれをフライパンに投入してスクランブルエッグ状にする。最後の仕上げらしい。
 卵と絡まったナポリタンはもう完成間近だ。美味しそうな匂いが更に強くなって食欲をそそる。

「ずっとご機嫌斜めだったのは、殴られたからじゃなかったんだね?」

 食器を準備しながら思い出したように聞いてみる。彼は少しだけ気まずそうに頷いた。

「アンタの恰好、着飾ってたし。あんな朝っぱらから、あんな恰好で外に出歩いてるのが気になってさ」
「ふうん……?」
「深夜とか夜中に出歩いてる女って、大抵ろくでもないことが多いからな」
「だから警戒してたの?」
「そう」
「でもお部屋に呼んでくれたよ?」
「……まあ」

 煮え切らない返事に疑問符が浮かぶ。警戒するわりには結局部屋に招いている。その矛盾した行動が気になったものの、追及するより先にパスタが皿に盛り付けられていった。
 黄金色の麺に真っ赤なケチャップソース。黄身の卵が散りばめられて彩りもいい。ナスと挽き肉をメインにしたナポリタンは、ニンジンとパセリも加えたお陰で鮮やかな配色に仕上がっていた。
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