2話

 美肌作りと体型の維持は、そこまでして徹底してる。手抜きなんて一切しない。一度は抱いてみたい女、そう思われたいから。
 せっかく抱いてくれるなら、今までで最高だったと言わせたい。肌が綺麗だと褒められたい。抱き心地がいいと思われたい。その為の努力は一切惜しまない。
 なのに今、必死で作り上げてきた体型を完全に否定された。しかも初めて会った相手にだ。これほどの屈辱があるだろうか。
 途端に目眩がして、ふらりと体が傾いた。倒れかけた私を彼の腕が咄嗟に支えてくれる。けれどパニック状態に陥っている私には、卯月さんを気にかける余裕なんてなくて。逞しい腕を避けてキッチンを出ようとする。

「おい朝霧」

 卯月さんの手が私の手首を捕らえた。

「か、かえります」
「は?」
「も、もっかい、出直してきます」
「……?」
「や、痩せすぎはだめなの……もっと肉つけなきゃ……ああでも体重管理どうしよう……」

 今以上に体重が増えるのはよろしくない。でも肉付きのいい最高の身体を目指さないと。
 顔面蒼白のままぶつぶつと呟く私を、卯月さんはきょとんとした顔で見つめていた。

「……あ、あの、そろそろ手を離して」
「ぶはっ」

 きったない笑い声が聞こえた。

「……へ?」

 卯月さんの口から漏れた、お世辞にも綺麗とは言えない笑い声。初めて聞く声のトーンに私は固まってしまう。私から手を離した卯月さんは、いったい何が可笑しいのか、肩を震わせながら口元を押さえて笑いを堪えようとしてる。
13/23ページ
スキ