2話

 タケくんとの思い出に浸かりながら歩いていたら、卯月さんが住むマンションに辿り着いた。時刻は20時ちょうどを回った頃。遅れずに着いてよかった。
 外観を見上げると、ガラス張りの近代的な造りに目を見張る。4階建ての建物で、窓ガラスが縦横に区切られている様が現代アートのよう。入口にはオートロックシステムが設置されていて、セキュリティも万全そうだ。

「デザイナーズマンションってやつかな……」

 思わず声に出てしまうほど洗練された雰囲気に圧倒される。これまでセフレくん達の部屋にお邪魔することもあったけど、ここまでハイセンスな物件は初めて見る。玄関脇に並ぶ郵便受けも高級感が漂っていて、ここに住む人達のステータスを感じさせた。
 インターホンの前で少し躊躇したものの、意を決して卯月さんの部屋番号を押す。プツンと電子音が鳴り響き、緊張が走った。

『……はい』

 スピーカーから聞こえたのは彼の低い声。電話越しみたいなノイズが混じっていて少し聞き取りにくい。でも不機嫌そうな響きじゃなかった。

「朝霧です。着きました」
『……本当に来たんだ。ちょっと待ってて』

 事前に名前を伝えておいたお陰ですぐに把握してくれた。呆れたようなニュアンスを含んだ言葉にちょっとだけ落胆する。まあ出会い方は最悪だし、こんな風に押しかけられて迷惑なのはわかるけど。でも私も今更引けないのです。
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