2話

 母親は以前から、私に護身術を身につけさせたいと思っていたらしい。父も同意見だったから、中2の途中で剣道を習い始めた。
 竹刀を持つ手の感覚、一足一刀の間合いに入る緊張感、面の打つリズムの爽快感。稽古は厳しくて辛かったけど、同時に楽しさも見出していた。
 鍛錬を積めば積むほど体力もついて、心が磨かれていくのを感じる。武道とは精神の学び―――師範がよく口にしていた言葉通り、内気な性格も改善されて、人に怯えることもなくなった。

 高校では友達もたくさん出来て、大学では高嶺の花とか呼ばれるようになって。自分の殻に籠らなくなったことで、新しい出会いも増えた。
 その中の1人がタケくん。彼を通して知り合った男性とも交流するようになり、そうして今の私が出来上がっていった。

・・・

 夜を迎え、スマホを片手に私は着信画面を眺める。これから彼―――卯月さんに抱かれに行くんだと思うと、緊張と高揚感で胸がはちきれそうになる。何度も自身の姿を鏡に映し、変な箇所がないか入念にチェックした。
 服装はナチュラルなガーリーテイストのワンピース。靴は低めのパンプスを選んだ。可愛さを前面に出しつつも、大人しめを意識したコーディネート。下着は白の清楚なデザインだけど、バックスタイルは大胆に素肌を魅せる総レース仕上げ。ちょっと攻めてみた。

 卯月さん、気に入ってくれるかな。

 ソワソワしながら何度もスマホを見る。画面には愛らしい子犬の待ち受け画像しか映っていない。行く前に連絡だけは入れておこうとショートメッセージを送ったのが30分前。いまだに返信は来ていない。
 約束の時間までもう少し。もしかして急用ができたのかな―――と不安に包まれた時。突然手の中でスマホが震えてビクっとした。
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