背中の距離

 ソファーの背もたれからブランケットを掴み取ると、陸はそのまま横になった。
 だが長い脚は肘掛けから大きくはみ出しており、窮屈そうでならない。
 それを見た日奈子は堪えきれず吹き出した。

「ふふっ……あははっ。ソファーじゃ窮屈で寝れないね」

 くすくす笑う声に陸は応えない。
 むしろその笑顔を焼き付けるかのように、細い視線をじっと固定している。

「笑ってごめんね。陸、ベッド使って? そっちの方がちゃんと眠れると思うから」

 日奈子の言葉を受けて、陸はのそりと起き上がった。
 ブランケットを綺麗に畳んでからソファーを降りる。
 再び日奈子に向き直った。

「……ひなも来て」

 短い命令形。
 だがそこには支配欲よりも、純粋に一緒にいたいという幼い執着が見え隠れする。

「私はソファーで大丈夫だよ」

 頑なに誘いを拒む日奈子に、陸は黙って近づいた。
 一歩。また一歩。百八五の長身が、距離を詰めるだけで威圧感が増す。
 日奈子の正面に立つと、陸は無言で両腕を伸ばし――ひょい、と日奈子を腕に抱き上げた。

「きゃっ!?」

 驚きの声を上げる日奈子を無視して、陸は寝室へ歩みを進めた。
 麦がソファーの上でおろおろと尾を振っているのを一瞥するが、足は止めない。
 抵抗する間もなくベッドに下ろされた日奈子の隣に、陸も沈み込んだ。
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