夜の静けさと湯気の向こう

 陸はそのまま浴室へと姿を消した。
 その背中を見送りながら、日奈子は小さく息を吐く。
 麦を膝に乗せながら天井を見上げた。

「……成り行きで泊めることになっちゃったけど……大丈夫かな」

 一連の流れに戸惑いが隠せない。
 シャワーの音が、遠くから微かに聞こえ始めた。
 その生々しい水音が、これから何かが始まる予兆を感じさせて緊張が走る。

(あの夜は酔った勢いだったけど、今日は素面だし……大丈夫だよね……?)

 麦をそっと撫でながら、日奈子は未だに整理しきれない心情を、胸の奥にしまい込んだ。
 冷めかけたカップから立ち上る湯気が、不安と期待が入り混じる夜の幕開けを静かに演出していた。
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