水族館デート

「見て。あの子、よろけてる」

 日奈子が微笑みながら指を差す。
 その先には一羽のペンギンが体勢を崩している。
 仲間の列から遅れて歩くその子を、別のペンギンが支えるように体当たりして助けている。
 そんな微笑ましいやり取りに、観客から温かい笑いが漏れた。

「……助け合ってるな」
「うん、可愛い……尊い……」

 日奈子の呟きに陸は内心ほっとした。
 先程まで彼女を覆っていた孤独感は消えている。今は目の前の愛らしい動物に釘付けだ。

 ガラス越しに見るペンギン達の奮闘ぶりが愛おしく思える。
 弱いもの同士が互いに補い合う、原始的な共生関係。純粋な愛情表現だ。
 その光景が、陸の胸の奥にほんのりとした温もりを灯していた。

(動物が好きなのか……)

 日奈子の新たな一面を知ることができた。
 それだけでも今日、ここに来た意義があったと、陸は密かに思う。
 隣で日奈子が楽しげに笑い声を上げ、それを聞いた陸の唇もわずかに緩む。繋いだ手にさらに力を込めた。
 ペンギン達の行進を前に、二人の距離も自然に縮まっていた。
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