水族館デート

 陸は何も言わなかった。
 追及するでもなく、無関心を装うでもなく。
 ただ黙って彼女の痛みを受け止めた。

 本音を言えば、彼女に言いたい事は沢山あった。
 もう一人じゃない、一人で頑張らなくていい、自分がずっと傍にいる、と。

 ただ孤独感が垣間見えた時、彼女の心に寄り添ってあげれば日奈子は救われたのか。
 答えは否だ。恐らく現時点で陸が何を言っても、きっと彼女の心には何も響かない。
 外科医として、患者の容態や微かな異変を誰よりも早く察知することに慣れている陸だからこそ、今はまだその時ではないことを、痛いくらいに理解していた。

 ◇

 二人は人の流れに沿って歩き続ける。
 やがて目的地である広場に到着すると、すでに多くの家族連れやカップルが列を作っていた。

「結構人気なんだね」
「……ああ」

 程なくして、ペンギン達が一斉に小道に飛び出してきた。
 客席から一斉に歓声が上がる。
 ふくよかな体を左右に揺らしながら、必死によちよちと歩く姿は無邪気そのものだ。
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