水族館デート

「……ねえ、どこに行こうとしてるの?」

 駐車場からどんどん遠ざかる方向へ陸が歩いていくので、日奈子は思わず尋ねた。
 本人は前方を見たまま答える。

「決めてない」

 そう言いながら、繋いでいる手を軽く引いた。
 まるで「こっちでいい?」と問いかけるように。

「ひなの行きたいところでいい」
「……私も何も考えてなかった」

 正直に答えると、陸は一瞬間を置いてから、ふっと口元を緩めた。

(……あ、また笑った)

 その素直な笑みに、日奈子の胸が波打つ。
 二人してノープラン、デートの計画としては落第点かもしれない。
 でも不思議と居心地は悪くないのは、きっとこの微笑みが見れたから。

 日奈子は空いている方の手でスマホを取り出し、画面を数回スクロールした。
 地図アプリを開いて現在地周辺を検索すると、すぐ近くに大きなショッピングモールがある。
 そして、そこに併設されている施設の一つに水族館の名前を見つけた。

「ここ、どうかな?」

 スマホの画面を見せながら尋ねる。
 画面には青い空間と、様々な魚たちが泳ぐ写真が表示されていた。
 陸は画面を一瞥すると、短く頷く。

「いい」

 同意を得られたので、日奈子は少し安堵する。
 陸の迷いのない足取りについて行くと、モールの入口が見えてきた。
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