水族館デート

 ランチを終えて、陸の手がレストランの扉を開ける。うららかな秋の陽気が二人を出迎えた。
 時刻は十三時過ぎ。
 ランチタイムを過ぎた街は、少し落ち着いた雰囲気に包まれている。

「美味しかったね。……ごちそうさま、陸」
「ああ」

 陸が短く同意する。日奈子は胸の奥が温かくなるのを感じた。
 単純なもので、お腹も心も満たされた幸せが、日奈子の足取りを軽くしている。
 でも、胸を満たす感情は決してそれだけじゃないことも、日奈子は薄々勘付いていた。

 ――隣にいる彼の存在感が、少しずつ自分の中で大きくなっていく。
 けど、それを認めてしまうには、まだ彼のことを知らなすぎる。
 見極めなきゃいけない。あの夜のことも、陸が自分に抱いている想いも。
 そうして駐車場に戻ろうと日奈子が歩き出した、その時だった。

(……あ)

 ふいに右手が掬い上げられる感触。
 陸の大きな手のひらに包まれ、ぎゅっと軽く握られた。
 まだ簡単に信用しちゃいけない、そう思い直した直後の出来事。
 繋がれた体温が、ひときわ強く、日奈子を現実に引き戻す。

「どこか行きたいところ、ある?」

 日奈子の動揺を知ってか知らずか、陸は淡々と尋ねてきた。

「あ……えっと」

 突然のことで戸惑い、言葉が続かなかった。
 レストランに来る前も、こうして手を繋がれた。だからって、二度目であっさり慣れるわけじゃない。
 繋がれた手に意識が集中してしまい、日奈子は視線を泳がせるしかない。

「嫌なら離す」
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