REBORN!

「私は君に出前を頼んでいないはずだが?」
「特別サービスですよ」


出前箱を片手に軽々と部屋へと入ってきた風。
次々と机に並べられていく料理を眺めながら、ヴェルデは口を開いた。

「薬物は入っていないだろうな?」
「勿論。貴方に薬を盛る意味がありませんから」
「ふん、それもそうだな」

目の前に並べられた料理へと手を伸ばし。
ヴェルデは風へと皮肉気な笑みを向けた。

「君が此処にいる時点で、私の生死など君の裁量一つだ」
「そう言われても困りますよ。ヴェルデ」
「まったく、君が気まぐれで私は助かる」

そうでなければ、すでに死体になっていただろうとヴェルデは呟いた。
黙々と料理を口に運び始めるヴェルデを風は見下ろし。
ため息を吐くように息を零した。

「ふ~……ヴェルデ。私が貴方を殺す訳がありませんよ」
「同じアルコバレーノだからか? それとも、不可解にも私を愛しているからか?」
「その両方ではありますが、比重は愛しているからの方が大きいですね」
「まあ、どちらでもいい。君は私を殺さなかった、この結果だけで十分だ」


料理を食べる手を止め。
机の端へとまとめていた書類をヴェルデは一枚取り。
隣に控えるように立っていた風へと放るように書類を手渡した。


「随分と、派手にやったものだ」


書類の内容と添付された写真へと目を通し、風は苦笑するように面白がった。
写真に写る物は、見覚えのある場所と死体だった。

「情報が早いですね」
「私を快く思わない者の動向など、常に監視しているさ」
「私は証拠を残さなかったと思いましたが?」
「その連中は、君の元へ行ったのだろう?」
「ええ、確かに来ましたね」
「その後、原因不明の死をその連中は迎えた」
「…………」
「証拠など、無くても分かる問題だ」
「――貴方の暗殺依頼をされたもので、つい」

笑顔で言ってのける風に、ヴェルデは鼻で笑った。



出前の裏で
「まったく、君の理解できない逆鱗に触れた連中に同情する」
「私は当然の報いだと思いますよ?」


end
(2015/04/27)
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