ヒロアカ

安眠妨害
(死柄木×相澤)


モコモコとベッドの上に出来た布団の山。
布団の間から黒髪を覗かせている相手は熟睡してるようだった。
その様子を死柄木は暫く眺め、波打ちながら広がっている髪を一筋指に。

「何の用だ」
「目覚めが早いなあ、イレイザーヘッド」

掴まれた手首はそれほど強い力で握られてはいなかったが、髪は指先から逃げた。
布団の山から半分だけ這いずり出てきた相手は、不機嫌としか言いようのない目つきを向けてきた。

「目覚めが遅いのは合理性に欠く」
「その割にはよく眠る」
「眠気の中で戦うのは合理的じゃない」
「なるほど――誰と戦うつもりなんだ、イレイザーヘッド?」
「…………」

顔の大半が手によって見えないはずの死柄木は、心底楽しげだった。
口元を引き結んだ相澤は、相手を掴んでいた手を離し、布団を手に取った。

「顔も見たくないか? それとも、そんなに眠いのか?」

また布団の中へと潜り込んだ相澤。
こんもりと体全体を布団で覆い、丸くなる相手へ声をかけながら、死柄木は布団へと手を置いた。

「それじゃあ俺が楽しくない」

手を置いた所から崩れ始める布団。
あと少しで中身が見えそうになる所で、布団は大きく跳ね上がった。

「ようやくまともに出てきた」
「……チッ」

個性を消された死柄木は、それでも楽しげに相澤を眺めた。
全くもって忌々しいとばかりに舌打ちをして、相澤は個性の発動を止めた。
下りてきた相澤の髪へと手を伸ばす死柄木は、上機嫌そうにようやく指先へと相手の髪を絡め取った。

「寝てばかりだと詰まらないだろう?」

感触を楽しむように髪を指先に纏わせ、相手の嫌がる顔すら面白いとばかりに弄ぶ死柄木。
寝てばかりだと詰まらない、その言葉に含まれるのは、ただ自分が退屈したくない感情だけ。

「楽しいゲームでもしようか、イレイザーヘッド?」

捕縛武器も、身に着ける物も何一つとしてない相手。
弄んでいた髪を放し、相手の頬へと手を添えた死柄木は、初めから拒否という言葉を許してはいなかった。

「もちろん、断らないよなあ」


end
(2014/11/03)
3/3ページ