FGO

「バーソロミュー氏! 見てくだちい!」

ジャーンと効果音を自分で言いながら、黒髭はある物を見せつけた。
勢い余って衝突しそうなほど近くに出され、バーソロミューは咄嗟に声を上げた。

「人の目の前にいきなり突きつけるなバカ髭!」
「おっと、これは失礼したでござる。では改めて。ドン☆」
「…………」
「デュフフフフッ! ついに拙者もコマンドカード刻印持ちでござる! どうです? カッコよくないです? カッコイイでしょ? マスターもスミに置けませんなぁ。これはもう、近々拙者が周回メンバー常連になっちゃう前触れと言っても過言ではないかと! よーし周回メンバー常連になったら拙者、紳士的な愛振りまいちゃうぞ!」

バスターカードの右上にちまっと付けられたコード。
妄想全開で満面の笑みを浮かべる黒髭へと、バーソロミューは憐れみの目を向けた。

「安心して欲しい、黒髭。それはボックスガチャでQPをカンストしたマスターの一時の気の迷いだ。貴殿が周回メンバーに入ることはない」
「えーいきなりの否定過ぎません? 確かにマスター殿は死んだ目でQPがーっとか言ってましたけど」
「そもそも刻印されたコードを見れば分かる問題だ。そのコードの名と効果は?」
「コード:コープス! 死霊特攻5%ですな!」
「貴殿のクラスは?」
「ヤダもーバーソロミュー氏また記憶喪失です? ライダーでござるが?」
「死霊特攻対象のエネミーは?」
「えーっと、スケルトン、ゾンビ、グール。あと鎧武者っぽいのもいましたな!」
「意図的に外したエネミーを言ってもらえるか?」
「…………」
「外したエネミーは?」
「ゴーストでござる……」

観念した黒髭が蚊の鳴くような声で答え。
追討ちをかけるようにバーソロミューは続けた。

「ライダーにとって随分と不利クラスが多い上に特攻対象が少ないものだな?」
「みなまで言わないでくだちい! そもそも☆1コードな時点でお察しでござろう!? 拙者だって本当はオール☆5コードで女の子全部乗せとかして欲しかった! もう贅沢言わないからせめてもうちょい使えるのを! キュアーとかキュアーとか! それすら無理なら☆1でも特攻対象が多い魔性特攻のイービルでも良いでござるー!!」

魂の叫びを吐きだし、ガックリと黒髭はうな垂れた。
分かってはいた、意味のないことなんて分かってはいた。
いや本当に、気の迷いとか言われるまでもなく。

「マスターも随分と無駄遣いをしたものだ」
「QP消費の観点から見ると高レア組の解放した方がいいですからなぁ、実用的にも」

開き直ってふて腐れた黒髭は、超現実的な視点から物を言い。
その言葉に賛同するように頷いてから、バーソロミューは苦笑するように言葉を紡いだ。

「けれど、マスターがそのコードを付けた理由も少しわかる」
「はいー? 気の迷いーとかボロクソ言っときながら今さら何でござる?」
「海賊に髑髏マーク。テンプレではあるが貴殿によく似合う」

キラキラエフェクト全開での台詞に天使が通り過ぎ。
やれやれだぜとばかりに黒髭は頭を振った。

「……は~、そういう所ですぞバーソロミュー氏」
「何だそのため息は、人の話を聞いているのか?」
「ハイハイ、聞いてますぞー拙者がカッコイイって話ですよねー」
「誰もそんなことは言っていない!」
「もう言ってるも同然ですー本当キザ野郎でござるなぁ」

なかなか認めないバーソロミューの頭をわしゃわしゃと掻き乱すように撫でれば、憤慨した相手に全力で抵抗をされた。

「頭を撫でるのを止めてもらおうか! 髪が乱れる!」
「時にバーソロミュー氏。ナデポについてどう思うでござる?」
「貴殿に実装されていないことだけは確かだ!」


end
(2019/10/20)
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