小話

【怒らせること】
(風ヴェル)

「君はとかく風と言う名を体言している」
「そうですか?」
「ああ、捕らえどころがない上に知らぬ間に近づく」
「それは、貴方が研究にばかり目を向けているからだと思いますが」

今、この状況でも、とヴェルデが画面を見ながら片手間に話す様子を眺め、風は心内で呟いた。

「ふん、人のせいにするとは愚の骨頂だな。どこにでも行く自由な相手を、いつまでも待つ気は私にはない」
「では、貴方が待たなくてもいいように、ずっと傍にいましょうか?」

後ろから囁くように言う風に、ヴェルデは眉を寄せて振り返った。

「今は邪魔だ。近づかないでくれ」
「わかりました……」


end
(2010/08/23)
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