小話

【赤い糸】
(風ヴェル)

「風、赤い糸が出ている」

ヴェルデから言われた言葉に、一瞬聞き違いかと思った風は、訂正の言葉を待った。
もっとも、ヴェルデは風をジッと見ているだけで訂正はしてこなかった。

赤い糸。
もしかしたらヴェルデは、恋人達を繋ぐと噂される赤い糸を見る装置を作ったのかもしれない。
そう思った風は問い返してみた。


「……何処に、繋がっていますか?」
「何を言っているんだ君は?私は、君の服の端がほつれて赤い糸が出ていると言ったんだ」

よく見れば、ほつれていましたねと、何となく風は考え過ぎな自分を恥ずかしく思った。

『ヴェルデならば、本当に赤い糸を見る装置を作れそうで恐ろしいですが……』


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