ググコク

「今日は珍しく儲かったなー」

アニマル姿で帰ってきた信楽は玄関を開け、ほくほく顔で廊下をのし歩いた。

「狐、今日はおじさ…ん……」

居間の襖を勢いよく開け目に入ってきた光景に、景品が入った紙袋を落とした。




「おっ。なんだ、信楽のやつ帰ってたのか」

獣姿で買い物から帰ってきたコックリさんは、玄関を開け薄暗い廊下を進んだ。
どうせまたコタツに入ってエロ本でも見ているだろう信楽がいる居間へと一直線に進み、襖を開けた。


「信楽、暗くなり始めたら廊下の電気ぐらつけとけ……って何で泣いてるんだよ!?」

ちゃぶ台の前で号泣しながら畳に突っ伏していた信楽は狐の声に顔をあげた。

「狐?」
「お前、何で号泣してんだよ」
「おじさん、また一人残されて出て行かれたのかと」
「仮に出てくとしたらお前の方だろ!!」

そもそも此処はこひなの家だと怒鳴り返され、それもそうだったと今更ながら信楽は気付いた。


「だいたい、ちょっと帰りは遅くなるって、ちゃんとそこに書いておいただろ!?」

ビシッと指差す方向にはちゃぶ台に置かれた白い紙。
丁寧な字で不在といつぐらいに帰ってくるのかを書かれていた紙を一瞬だけ眺め、信楽は真顔でコックリさんを見た。



ちゃぶ台に紙一枚
「いや、おじさんに誰もいない家と残された紙は鬼門だから」
「じゃあどうしろってんだよ!?」


end
(2012/10/25)
2/6ページ