イリレア

胸の高鳴り
(アクカワ+ディシェイド)


「どうした、カワサキ。顔色が悪いぞ?」


休憩がてら座らされていたベンチで、アクセルは不思議そうに首を傾げた。
ISETAMAの売り場でディシェイドに連れられていたはずのカワサキは、ゲッソリとした表情で戻ってきた。
迷子予防にアクセルを座らせていたベンチにドッカリと座り込んだカワサキは、のろのろと頭を上げた。


「なんか……お前の隣が一番ホッとするな、アクセル」
「そうか?」
「ISETAMAの社長の隣にいると妙にドキドキしてきて気が休まらねぇ」
「…………」


何が原因だと悩むカワサキの言動を聞きつつ、その言葉選びにアクセルは無言になった。



「不整脈とかって訳でもねーし、何だコレ?」
「……ディシェイドの隣にいる時だけか?」
「それが不思議なんだよなぁ。現にお前の隣だと何ともならねぇし」


逆にそれがホッとするような気すらする、と唸りながらカワサキは口にした。


「カワサキ君! 此処にいたんだね!」
「はいッ!?」
「次はあっちの方を見に行かないかい?」
「あの、いやその!!」


ディシェイドに唐突に近付かれたカワサキは、目に見えるほど顔を赤くし挙動不審になった。
上機嫌なディシェイドはその事をあまり気にせずに、相手の手を取り売り場の方へと出発し始めた。
カワサキの急な変化を目の当たりにし、アクセルは少し考えた後、口の端を上げた。


「ディシェイドの隣は、妙に胸が高鳴る、か……」



目の前で起こった劇的なカワサキの変化。
その答えが分かり、始めは小さく笑い声を漏らす程度だったが、次第に高笑いへと変わっていった。
周りにいた客がギョッとするほどの笑いを収め、カワサキの姿を眺めたアクセルは清々しい気持ちで呟いた。



「高い物に囲まれると動悸がする体質も、大変だな?カワサキ」


end
(2014/06/09)
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