イリレア

アレな画像
(フクカワ)


「オレのプライバシーは何処に行ったんだよ!」
「おー、何だカワサキ。突然叫んでどうした?」
「フクメンさん! 聞いてくださいよ、こいつ!」


わなわなと肩を震わせながら、カワサキはナヴィを指差した。

「金貰って頼まれたからってッ、オレの情報他人に売ろうとしたんすよ!」
「だって、私情報屋だし。情報って言っても画像じゃない」
「隠し撮りよりタチ悪い方法で取り寄せたのだろ!?」
「それは、普通の証明写真の画像とかじゃ物足りないっていう依頼人の要求だから」
「依頼人て誰だよ!? あと、今すぐ画像消せ!」
「待て待てカワサキ。パソコン壊したら借金上乗せ確定だぞ? とりあえず落ち着け」


ナヴィのパソコンに手を伸ばそうとするカワサキを受け止め。
どうどう、と落ち着かせるようにフクメンは宥めた。


「で? どんな画像なんだ?」
「フクメンさん!!」
「はい、コレよ」
「うわっバカ!見せるな!」
「あー、分かった分かった。お前は見るなカワサキ。代わりにしっかりと見といてやるから」


カワサキの目にパッと手を当て目隠しをしたフクメン。
突然の暗闇に猛烈にカワサキは抵抗をした。


「それ何の解決にもなってないんすけどッ!? フクメンさん!」

放せぇええええ! とフクメンの手を外そうともがくカワサキ。
ガッチリとホールドし相手の抵抗をものともしないフクメンは、身を乗り出してナヴィのパソコンを覗き込んだ。


「あー、この前のアレか」


なるほどなるほど、と一人納得したように頷くフクメン。
画像を見てのコメントに、猛烈に嫌な予想しかできないカワサキは暴れた。


「アレって何すか!? いい加減、手外してくださいよ先輩!!」
「意外と綺麗に映ってるし、依頼人の趣向がよく分かるやつでしょ?」
「確かにな。まあ、あんまり他人には見せたくないのだな」
「フクメンさん! オレの話聞いてますか!?」


他人に見せたくないのってどんなのだ、と危機感を覚えたカワサキは必死にフクメンの手を外し。
ナヴィのパソコン画面へと視線を向けようとした。


「まあ、他人には見せたくないから、これは削除だな」


ポチッとデリートキーを押すフクメン。
一瞬にして消えた画像、後に残ったのは何もないパソコン画面だった。


「何の画像だったんだよォオオ!!」
「よかったなカワサキ。画像は消しといたぞ?」
「いやッ!? 何の画像だったか見ないと安心できないんすけど先輩!」
「大丈夫だって、オレがいつも見てる感じのだった」
「一番安心できねぇ答えが返ってきやがった!!」
「あーあ。せっかく取り寄せたのに」
「それからナヴィ。依頼人には悪いが、同僚の情報は売るな」
「はいはい」
「あと、残りの画像あるなら全部オレが買い取るからな」


その依頼人とやらの倍額は出すと続けるフクメン。
好条件すぎる金額設定に、ナヴィは交渉成立とばかりに、にんまりと笑った。
目の前で行われた唐突な取引に、カワサキは慌ててフクメンに詰め寄った。


「残りがあるなら全部削除させてくださいよフクメンさん! 何で買い取ってるんすか!?」
「よく撮れてたな的な記念?」
「何の画像だったんすか!?」
「カワサキ。あんまり騒いだら周りの奴らが驚くだろ?」
「フクメンさん! せめてヒント! 何の画像だったかのヒントだけでも!!」
「あれだな、カワサキ。外ではめ外しすぎるのはよくないって事が分かったな」
「だから! 何の画像だったんすかッ、先輩!!」


フクメンの胸ぐらを掴み、涙目で質問するカワサキ。
笑いながらフクメンはカワサキからの質問をはぐらかし続けた。


end
(2014/06/04)
5/6ページ