凌Ⅳ

バタバタと帰ってきた早々に自室に直行したⅣ。
その事を不思議に思ったⅢは首を傾げてから、Ⅳの部屋へと向かった。


「兄様? 急にどうしたんですか」
「Ⅲ! 俺はしばらくの間戻らないからな!!」

必要最低限の荷物をまとめたⅣはさっさと廊下へと出た。
その後を慌てて追いながらⅢは叫んだ。

「何処に行くんですか、Ⅳ兄様!!」
「どうしたんだい? 随分と慌ただしいね」
「トロン! Ⅳ兄様を止めてください!」

廊下で会ったトロンに、Ⅳは立ち止まってから捲し立てるように口を開いた。


「ナンバーズ集めも賞金稼ぎもしてくる。文句はないだろトロン!」
「別にかまわないよ、Ⅳ」

こともなげにⅣの外出許可をしたトロン。
そんなに簡単に許可しないでください、と心の中で思いながらⅢはⅣの後を追った。


「兄様! せめて行先だけでも!!」
「此処に書いてある。ただし、凌牙の奴には絶対に教えるな!!」

走り書きで書かれた紙を追ってくるⅢに突きだした。



「いいな! 凌牙の奴が来たとしても絶対に教えるなよ!?」

念を押すようにホテルの場所と連絡先と今後の予定を書いた紙を渡したⅣは出て行った。
嵐のように去って行ったⅣに渡された紙を持ち、Ⅲはトロンへと質問した。


「トロン、Ⅳ兄様はどういう意味でさっきの言葉を言ったんでしょうか?」
「そうだね、Ⅳの性格を考えるとさっきの言葉の意味は――『凌牙が来て居場所を聞いてきたら教えておいてほしい』かな?」
「……また喧嘩をしたんでしょうか」
「それ以外にⅣが家出する理由はないよ、Ⅲ」



探すな
「痴話喧嘩に巻き込まないで欲しいですね」
「Ⅲ。ソレを言ったら身も蓋もないよ」


end
(2012/01/10)
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