凌Ⅳ

デート?
凌Ⅳ


「いやぁ、とても素晴らしいですね! そうは思いませんか凌牙!!」
「…………」

ノーコメントで、と凌牙はⅣから目を逸らした。


キラキラしすぎていっそ気持ち悪いほどの笑顔を振りまくⅣに、若干引きそうになった。
何が楽しいのかがさっぱり分からないまま、凌牙は相手に手を引かれた。

ガラスケースに飾られたビスクドールをファン用ではない笑顔で眺めるⅣ。
同じように眺めながら、そんなⅣを横目で見て不思議に思うしかなかった。


「……楽しいのかよ」
「ええ、楽しいですよ」

可愛らしくて是非とも手に入れたいですね、と冗談ではなく本気で言うⅣ。
売店に行った時にはどんな反応をするんだと、凌牙は不安でしょうがなかった。

似合いもしないビスクドールを大切に抱えながら物色をして。
人形の目だけが並ぶような場所も平気でうっとりしながら眺めて。

確実に買う。
それも際限なく。

その時、彼女の買い物に付き合わされた彼氏よりも酷い事になると断言できる。
ビスクドールを眺め、すっかり気をよくしたⅣは凌牙の憂鬱にも気付かずふと呟いた。


「次は貴方に合わせて、水族館ぐらいなら付き合ってあげてもいいですよ」
「……言ったな」
「はい?」

今度は目一杯こっちが振り回してやる、と凌牙は心の中で決めた。



デート?
「あぁ!! 凌牙! 次はあちらに行きましょう!!」
「普段との落差が激しいな……」
「何か言いましたか? 凌牙」
「別に」


end
(2012/01/06)
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