断片話

◆青年の苦悩
(Ⅳ+凌)

「凌牙。たしかに俺は昔Ⅴの髪が好きだった、だけどなぁ……」

憂い気に目を伏せていたⅣは、ガッと顔をあげて叫んだ。

「ファンに囲まれてまず真っ先に気付くのが、あ、こいつらⅤに比べたら髪が傷んでるな、とかないだろ!!」
「は?」
「分かるか! 凌牙!? その事を無意識に思った俺の絶望を!? 確かに俺は長い髪が好きで! 特に三つ編みとか、編むのも触るのも大好きだけどな! 判断する基準が兄貴の髪とか! ファンに申し訳なさ過ぎて逆に謝りたくなった!!」

話が全く見えない。
悩みを聞いてくれとは言われたが、どう反応していいのかが本気で分からなかった。
相手の様子はお構いなしに、Ⅳはファン達との事を思い出しながら悔しがるように拳を握りしめた。

「何で俺はあの時! よりにもよってⅤの髪と比べたんだ!?」

髪は女の命だと言われるぐらい気合いの入りまくった髪の女性ファン達。
そんなファン達に囲まれて、よりにもよって一番例に出してはいけない人物を思い浮かべたのが汚点だったとⅣは力説した。


(2013/01/05)
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