断片話

◆親バカ
(フェイトロ)

「フェイカー!! 今すぐにハートランド中の監視システムを貸して!」

突然の怒鳴り声に肩をすくめキーボードから手を離したフェイカーは、声の主へといやいやながら振り返った。

「……バイロン、何の用だ」

そもそもどうやって入ってきたのかと見れば、部屋の中に勝手にワープ用の穴を開けられていた。

「フェイカー、今すぐ、監視システムを貸して」
「私用で使える訳がないだろ」
「トーマスとミハエルが穢されてもいいって言うのかい君は?!」
「少し落ち着け、バイロン」

真顔で返答するトロンに頭が痛くなりそうだとフェイカーはため息をついた。

「そもそも、何があればそこまで取り乱す」
「息子たちがデートに行った」
「……それだけか」
「一番重要な事だろ?」
「穢されるの意味はなんだ、そもそも誰と行ったんだ?」
「凌牙と一馬の息子」
「友人と出かけただけだろ」
「水族館にオーパーツ美術館、完璧なデートコースでもそう言えるのかい?」

本格的に頭が痛くなってきたとフェイカーは額に片手を当てた。



「バイロン。本当に息子達の邪魔をしたかったのか?」

一喜一憂で監視カメラの映像を見てはいても、どこか演技にしか思えない調子のトロンへと質問した。
騒ぎながら映像を見ていたトロンは、ピタリと騒ぐのを止めた。
画面からフェイカーへと視線を移動させ、含むように笑いながら口を開いた。

「……君に会うための口実作り、て言えば満足かい?」
「からかいに来たのか」
「そうだね、半分は正解、半分は外れ。トーマスとミハエルが気になったのは本当だったから」
「…………」
「クリスは君の息子と一緒にいて邪魔できないし、トーマスとミハエルは凌牙と一馬の息子と出かけたし、つまらなかったんだよ」

君しか話し相手が思い当たらなかったし、と苦笑するように言うトロン。
トロンの話を聞き終えたフェイカーはため息をつき、椅子から腰を上げて歩き出した。

「フェイカー?」
「バイロン、紅茶とコーヒー、どっちが好きだ」
「しいて言うなら紅茶だけど……」

どうして今それを質問するのかとトロンは首をかしげた。

「休憩時間にする。お前が隣にいると煩くてかなわないからな」

フェイカーの言葉に、満面の笑みになって言葉を付け足した。

「じゃあついでにケーキもだしてよ。僕ケーキ大好きだから」


(2012/09/21)
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