断片話

◆ⅣⅣ


「ファンサービスは俺のモットーだ!!」

渡してたまるかと宣言するⅣに、もう一人のⅣは軽く鼻で笑った。

「それは私も一緒ですよ。ですが、笑えますねぇ。今の貴方で表向きのファンサービスをできるとは思いませんが?」
「Ⅳ兄様達、お止め下さい。今日の予定は全部キャンセルしますから」
「なっ!? 待てⅢ!! こんな奴のせいで予定が狂うのはごめんだ!」
「なら、私が予定通りに進めておきますよ」
「テメーが行ったら本末転倒なんだよ!」

片手をひらひらと振って颯爽と外に出ようとしたもう一人のⅣを追いかけるⅣ。
その様子を眺め、Ⅲは軽くため息をついた。


「ああ! 腹が立ってしょうがねぇ!! あいつが外に出てるからろくに出歩けねぇじゃねぇか!!」
「いいじゃありませんか、Ⅳ兄様。ⅣはⅣ兄様の外用の顔ですから素行に関しては心配はないと思います」
「Ⅲ……その呼び方だと呼び捨てにされてるみたいで微妙だぜ」
「すみません。これ以上区別できる呼び方が思いつきませんでした……」


(2012/03/01)
◆ⅣⅣ


「……悪夢だ」
「なってしまったものは仕方ないでしょう」

飄々としている自分と同じ顔を持つ人物を前に、Ⅳはベッドに突っ伏した。

「何で分れてんだよ。そもそも俺は二重人格なんかじゃねぇぞ」
「まあ、外用の顔が私ですから。あながち二重人格と言えなくもないと思いますよ」
「テメェは何で驚かねぇんだよ!!」
「驚きましたよ、十分。しかし、起きて早々の貴方の驚きように逆に冷静になれましてねぇ」

思い出してクスクスと笑い始めるもう一人のⅣに、Ⅳは舌打ちした。

「くそっ、性格悪過ぎんだろ」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」


(2012/03/01)
◆ⅢⅣ


「Ⅳ兄様!! 今日という今日は許しません!」
「悪かったって言ってんだろⅢ!!」
「その言葉は聞き飽きました!」
「デュエルアンカーだけは止めろ! ファンサービスに行けなくなるだろ!?」
「僕との約束を破ってまで行くようなものですか!」

バタバタと部屋中を走り回るⅣとⅢ。
その騒動に動じることなく本を読むⅤは、時々デュエルアンカーが掠めてくるのを軽く避け続けた。

「クリスマスもバレンタインもファンサービスに出かけた兄様を見送った僕の気持ちも考えてください!」
「夜は帰ってきただろ!?」
「一緒に過ごせないと意味がないんです!! Ⅳ兄様が帰ってきたのは真夜中でした!」
「……まぁ、そうだけどな」

それに関しては悪かったと、気まずげにⅣは呟いた。


(2012/03/09)
◆凌Ⅳ


「おい、何でこっちのベッドに入ってくるんだ」

そっちに自分のがあるだろと促せば、小馬鹿にした態度でⅣは肩をすくめた。

「わかってませんねぇ? 部屋にいる全員で同じベッドに寝るのが普通ですよ。凌牙」
「は?」
「まったく、そんな事も知らないんですか?」

何処の常識だと言いたくなるⅣの断言に、驚きで言葉も出なかった。
何か間違ったことでも言ったかと言いたげに此方の反応を待つⅣ。
色々と騙されてる、むしろ騙した奴は確信犯だろと叫びたかったが、黙っておくことにした。


(2012/03/28)
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