断片話

◆Ⅲ+Ⅳ


「優しいだけのⅣ兄様なんて兄様じゃない!! 表面上ではファンに愛想をふりまいて、その実内心では、ウゼェんだよこの(ピ――)野郎!!、と罵ってるぐらいじゃないとにⅣ兄様じゃありません!!」
「ちょっとまてⅢ、お前は普段どんな目で俺を見て……」
「違いましたか?」

きょとんとした顔で小首を傾げるⅢに、まあ合ってるけどな、とⅣは反論が出来なかった。

「とにかく! 凌牙に対してそんなフワフワとした気持ちでいるなんて兄様らしくありません!!」
「いや、そうは言ってもなぁ」

そんなにフワフワしてたのかと、いまいちわからないままⅣは悩んだ。


(2012/01/04)
◆凌Ⅳ


「路地裏に連れ込まれてよかったぜ? 何せ、表じゃろくに断れないからなぁ」
「Ⅳッ!!」
「実質三対一のバトルロイヤルに嬉々として賛同してきた奴らが、可哀想だとでも言いたいのかよ?」

お優しいな、と嘲笑いながらⅣは近くに倒れていた男を蹴り飛ばした。

「ああ、そう言えば随分と俺の言葉に興奮してたな……『暴力は止めてください、こんな所に連れ込んで何をする気ですか!?』」

少し前の出来事を再現するように言葉を吐くⅣ。
男達がどんな理由でⅣを連れ込んだのかが容易に想像でき、凌牙は顔をしかめた。
その間にも続くⅣの台詞は路地裏の空間を埋め尽くした。

「『もし私が負けたら、その時はお好きなようにしても構いません』――こんな風な言葉に興奮して挑戦してきた奴らに同情する余地はあるのか?」

言い終わり、笑いを噛み殺していたⅣは高らかに笑い出した。

「こいつらは俺のファンサービスをわざわざ欲しがってたんだよ。それに応えて何が悪い」


(2012/01/04)
◆遊馬+明里


「あれ、それシャークじゃん」

何でⅣと写ってるんだと、明里が持っていた写真を覗いた遊馬は呟いた。
その様子を眺めていたアストラルは、ふと口を開いた。

『遊馬、君は今とても致命的なミスをした』
「何がだよ?」
『私の推測では――』
「は? 聞こえねぇよ、アストラ…」
「遊馬!! あんた知ってるなら此処に写ってる人物かⅣを連れてきなさい!!」
「えぇー!?」
『……やはりな』

溜め息をつくような仕草をするアストラルに、遊馬は先に言えよと心の中で叫んだ。


(2012/01/05)
◆Ⅲ+Ⅳ


「Ⅳ兄様! お風呂上りは髪をちゃんと乾かしてください!!」

部屋を水浸しにする気ですかと怒りながら近づくⅢ。
適当に拭いたきり着替えて肩にタオルをかけていたⅣはギクリとした顔でⅢを見た。

「聞いてますか、Ⅳ兄様!」
「わかったわかった……分かったから俺はいいからトロンの所に行けよ」
「トロンはⅤ兄様が髪を乾かしてます」
「じゃあⅤはどうなんだよ。髪が長いから大変だぜ……」
「Ⅳ兄様。Ⅴ兄様は髪を乾かさずにいるなんて子供じみた事はしません」

どうにか回避しようとするⅣの言葉に、平然と返すⅢ。
その返答に、Ⅳはヒクリと口元を引きつらせた。

「……じゃあ何か? 俺は子供以下だって言いたいのか?」
「少なくとも髪も乾かせないでいるところはそう思うよ、Ⅳ兄様」
「言うじゃねぇか……Ⅲ!!」
「ちょっ!? 兄様止めてください!! 僕の服が濡れます!」

絞め技をかけてくるⅣに抗議するようにⅢは叫んだ。


(2012/01/07)
◆トロⅣ

「Ⅳ。跪いてください」
「……はあ?」

仮面で隠されていない方の目と口を笑顔の形に作ったまま言うトロンに、Ⅳは聞き返した。

「ああ、間違えました。ソファーに座ってくれませんか?」

どう言い間違えるんだ、と言いたくなる口を噛みしめⅣは渋々命令されたとおりにした。
ソファーに座ると、トロンはさらに笑みを深めて隣へとよじ登ってきた。
何をする気だと思いながらⅣが眺める前で、トロンはソファーの上に膝立ちになりⅣの肩を掴んだ。

「おい、トロン…?」
「キスがしにくくてしょうがないですね、この体は」

君の顔が遠くてしかたがない、と文句を言いながら笑うトロンは顔を近づけてきた。


(2012/01/11)
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