その他

「最近、弟の様子がおかしい」
「何で俺がお前の相談に乗らないといけないんだ、Ⅳ」

迷惑だと顔に出ている凌牙の言葉に、Ⅳは切羽詰まった様子で助けを求めた。

「いいから聞け凌牙! お前以外に相談相手がいないんだよ!!」
「寂しい奴だな……」

いっそ哀れに思えてくるⅣの人間関係に、少しぐらいなら聞いてやるかと凌牙は思った。


「昔は可愛かったんだよ。まあ、今でも十分にあいつは可愛いけどな」
「惚気は聴かないぞ」
「それが、最近だと一緒に風呂に入りたがったり、寝る時には俺のベッドにもぐりこんで来たりしてくる」
「…………」
「まあ、風呂に入ったり、一緒に寝るぐらいなら別に問題はないんだけどな」
「いいのかよ」

そこからして問題ありだろと言う気力が失せながら凌牙は続きを聞いた。

「俺がファンと二人きりでデュエルするのを妨害したり。抱き枕やマウスパッドとかのグッズを作るのを許さなかったり。たかが猫耳をつけての握手会をするのを止めたり」
「賢明な判断だろ」

特に、前半一つ以外の全部が。


「ファンサービスだぞ!? ファンの期待に応えるのがスターの役目だろ!」
「後半の要望がおかしい事に気付け、Ⅳ」
「スキンシップがやたらと多くなったり、四六時中一緒にいたがってトイレにまでついて来たり。
 最近弟が考えてることが分からないんだよ」
「……警察に行け」

一つ間違えればストーカー行為だろ、と凌牙は冷静に判断した。



「見つけましたよ、Ⅳ兄様」

満面の笑みで呼びかけてくるⅢに、ビクリとⅣは体を震わせた。

「Ⅲッ……」

どうやって見つけたのか、と驚くⅣは逃げ腰で椅子から腰を浮かせた。
その様子を見た凌牙は、こんな目立つカフェテラスなんかにいるからだろと呆れた。

「早く帰りましょう、Ⅳ兄様」

近づいてきたⅢは、花が咲くような笑顔で言った。
顔を引き攣らせて椅子から立ち上がったⅣは、盾にするように凌牙の後ろに回った。


「お、俺はまだ凌牙と話があるんだよ!」
「…………」

Ⅳの一言に、笑顔だったⅢは一瞬で険しい表情になり凌牙を睨んだ。



「Ⅳ兄様の時間を独占するなんて――調子に乗るなよ、凌牙」

睨みつけてくるⅢと、話を合わせろと懇願の視線を向けてくるⅣ。
何でこの兄弟の問題に巻き込まれなくてはいけないのかと凌牙は遠い目をした。



相談拒否
「俺は話す気はない」
「凌牙!? この裏切り者!!」
「さ、行きましょうかⅣ兄様」


end
(2012/03/28)
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