その他
サンタ宛てに書かれた手紙を見たトロンは顔を綻ばせた。
「いやぁ、可愛いですね。Ⅲはお人形、Ⅳはオーパーツのレプリカですか」
それぞれによく似合ってますね、と笑いながら言うトロン。
その言葉に、トロンに手紙を渡したⅤは一瞬何かを言いかけようとして止めた。
手紙を封筒に戻しながらトロンはⅤへと視線を戻した。
「では、今夜は早めに寝るよう言っておいてください」
「はい」
「ああ、きっとⅤの所にも良い子にしていればサンタは来ると思いますよ」
上機嫌に言い残したトロンはゆっくりと部屋を出て行った。
部屋に残ったⅤは暫く考えた後、弟たちの所へと戻った。
「Ⅴ。トロンのやつ本当にサンタに手紙わたすのかよ?」
「Ⅳ兄さま、トロンにそんな口をきいたらダメです」
「トロンが手紙わたさないとサンタが来ないんだぞ、Ⅲ」
「でもトロンを疑うのはいけないと思います」
喧嘩を始めようとする弟達をなだめながら、Ⅴは別の事へと考えを巡らせていた。
明け方近く、まだ夜中と言ってもいい時間。
そっと目を開けたⅤは、枕元に箱がある事を確認した後ベッドから起き上がった。
そのすぐ後に、ひっそりと足音を立てずに歩き出し扉へと向かった。
「Ⅴ兄さま! 見てください! 朝起きたらマクラの近くにあったんです!」
黄金スペースシャトルのレプリカを持ったⅢはキラキラとした目で近づいてきた。
「そうか……」
よかったな、とⅤがⅢの頭を撫でていると今度はⅣが扉を乱暴に開けて部屋に入ってきた。
「Ⅴ! 見ろよこれ!! かわいいやつが来たんだ!」
両手で大事そうに人形を抱えて来たⅣは自慢するようにⅤに見せた。
「よかったですね、Ⅳ兄さま!」
「ああ、よかったな……」
今にも閉じそうな目を辛うじて開け上の空で答えるⅤに、ⅣとⅢは顔を見合わせた。
「Ⅴのやつ、なんか疲れてないか?」
「きっとボク達がサンタさんを捕まえてほしいなんて言ったからですよ」
「やっぱりサンタとデュエルしたんだろうな」
「サンタさんとデュエルできたなんて、Ⅴ兄さまはすごいです」
羨望の目でⅤを見たⅢとⅣは、その後すぐに互いに貰ったプレゼントへと興味が移っていった。
懐かしい夢から目が覚めたⅣは、枕元にある箱を眺めため息をついた。
起き上がり、枕元にあった箱を抱えⅢの部屋へと向かった。
途中、廊下で鉢合わせたⅢにⅣは確認するように口を開いた。
「Ⅴはまだ起きてないだろうな?」
「最近はプレゼントがちゃんと渡されるって安心してるみたいだったから」
たぶん起きてこないと思う、とⅢが似合わないため息をつきながら答えた。
同じように箱を抱えている相手を眺め、Ⅳはガリガリと頭を掻いた。
「トロンのやつ、いつになったら俺達の趣味覚えるんだよ」
「いいじゃないですか、Ⅳ兄様。僕達の間で交換すればすむ話です」
「毎年間違えてるよな」
「……そうですね」
もうサンタからのプレゼントを喜べるほどの子供でもない。
それでも、全てトロンの好意からの贈り物だと思うと無下にもできない。
今年も、互いにため息を吐きながらプレゼントを交換するしかなかった。
間違いサンタ
「トロンの中で俺達は何歳で止まってんだ?」
「きっとずっと前で止まってるんだよ」
「孫の小さい頃の好物を律儀に覚えてる年寄かよ」
「Ⅳ兄様。言い得て妙なのでその表現はちょっと……」
end
(2012/01/19)
「いやぁ、可愛いですね。Ⅲはお人形、Ⅳはオーパーツのレプリカですか」
それぞれによく似合ってますね、と笑いながら言うトロン。
その言葉に、トロンに手紙を渡したⅤは一瞬何かを言いかけようとして止めた。
手紙を封筒に戻しながらトロンはⅤへと視線を戻した。
「では、今夜は早めに寝るよう言っておいてください」
「はい」
「ああ、きっとⅤの所にも良い子にしていればサンタは来ると思いますよ」
上機嫌に言い残したトロンはゆっくりと部屋を出て行った。
部屋に残ったⅤは暫く考えた後、弟たちの所へと戻った。
「Ⅴ。トロンのやつ本当にサンタに手紙わたすのかよ?」
「Ⅳ兄さま、トロンにそんな口をきいたらダメです」
「トロンが手紙わたさないとサンタが来ないんだぞ、Ⅲ」
「でもトロンを疑うのはいけないと思います」
喧嘩を始めようとする弟達をなだめながら、Ⅴは別の事へと考えを巡らせていた。
明け方近く、まだ夜中と言ってもいい時間。
そっと目を開けたⅤは、枕元に箱がある事を確認した後ベッドから起き上がった。
そのすぐ後に、ひっそりと足音を立てずに歩き出し扉へと向かった。
「Ⅴ兄さま! 見てください! 朝起きたらマクラの近くにあったんです!」
黄金スペースシャトルのレプリカを持ったⅢはキラキラとした目で近づいてきた。
「そうか……」
よかったな、とⅤがⅢの頭を撫でていると今度はⅣが扉を乱暴に開けて部屋に入ってきた。
「Ⅴ! 見ろよこれ!! かわいいやつが来たんだ!」
両手で大事そうに人形を抱えて来たⅣは自慢するようにⅤに見せた。
「よかったですね、Ⅳ兄さま!」
「ああ、よかったな……」
今にも閉じそうな目を辛うじて開け上の空で答えるⅤに、ⅣとⅢは顔を見合わせた。
「Ⅴのやつ、なんか疲れてないか?」
「きっとボク達がサンタさんを捕まえてほしいなんて言ったからですよ」
「やっぱりサンタとデュエルしたんだろうな」
「サンタさんとデュエルできたなんて、Ⅴ兄さまはすごいです」
羨望の目でⅤを見たⅢとⅣは、その後すぐに互いに貰ったプレゼントへと興味が移っていった。
懐かしい夢から目が覚めたⅣは、枕元にある箱を眺めため息をついた。
起き上がり、枕元にあった箱を抱えⅢの部屋へと向かった。
途中、廊下で鉢合わせたⅢにⅣは確認するように口を開いた。
「Ⅴはまだ起きてないだろうな?」
「最近はプレゼントがちゃんと渡されるって安心してるみたいだったから」
たぶん起きてこないと思う、とⅢが似合わないため息をつきながら答えた。
同じように箱を抱えている相手を眺め、Ⅳはガリガリと頭を掻いた。
「トロンのやつ、いつになったら俺達の趣味覚えるんだよ」
「いいじゃないですか、Ⅳ兄様。僕達の間で交換すればすむ話です」
「毎年間違えてるよな」
「……そうですね」
もうサンタからのプレゼントを喜べるほどの子供でもない。
それでも、全てトロンの好意からの贈り物だと思うと無下にもできない。
今年も、互いにため息を吐きながらプレゼントを交換するしかなかった。
間違いサンタ
「トロンの中で俺達は何歳で止まってんだ?」
「きっとずっと前で止まってるんだよ」
「孫の小さい頃の好物を律儀に覚えてる年寄かよ」
「Ⅳ兄様。言い得て妙なのでその表現はちょっと……」
end
(2012/01/19)