その他

外から戻ってきたⅣは真っ先に自室へと戻り、寝室の扉を開けた。
ベッドの近くで座っている相手を眺め、ゆっくりと手を伸ばした。
掻き抱く様に引き寄せた相手と共にベッドへと倒れこんだⅣは、笑み崩れて叫んだ。


「あぁ! 今日一日の疲れさえ吹き飛ぶほどの貴方の笑みに私は癒されます!!」

一頻り興奮し、相手の頬に指を這わせたⅣは恍惚とした表情で息を吐いた。


「まったく! なんて可愛らしいのでしょうか!? その白く滑らかな肌! 宝石にも劣らない青い瞳!! 全てが私を魅了する!!」


外からくぐもった声と寝室の方へと近づく足音がしてもまだⅣは相手に夢中だった。


「その服にも飽きたところでしょう、今よりもっと貴方に相応しい服を作らせました。勿論、私が丁寧に着せてあげます。 それから貴方に新しいお友達も増えますよ。嗚呼、怒らないでください。そんな目で訴えられると私の方が悲しくなってしまいます。これも全て、私を魅了する貴方達が悪いのですよ?」


『Ⅳ兄様――寝室にいらっしゃるんですか? Ⅳ兄様?』


「どうして外には私に会うと奇声をあげる豚しかいないのでしょうかねぇ? 貴方のように物静かで素敵な淑女ばかりの世界になればいいと常々思いますね」


「失礼します。フォ……Ⅳ兄様!?」
「は? ……なっ?! …ス、Ⅲ!? 部屋に入る時ぐらいはノックしろ!!」

ベッドから跳ね起きたⅣは寝室に入ろうとしていたⅢへと駆け寄り押し戻した。
何度もノックをしたと言いそびれながら、Ⅲは素直に謝った。


「……すみません。ブ、Ⅴ兄様が呼んでいたので来たのですが」
「はぁ? 面倒くせぇ、何の用だよⅤの野郎は」

今までの態度が嘘のようにガラが悪くなったⅣはあからさまに不機嫌そうになった。
呼び出しに応じそうにないⅣを前に、控えめにⅢは言葉を付け足した。


「出来ればすぐに来るようにと言っていたので……行っていただけますか?」
「チッ! プライベートのプの字も知らねぇのか、あの野郎は!!」
「あ、あのッ! Ⅳ兄様!!」

ズカズカと部屋を出たⅣは、乱暴に部屋の扉を閉めた。
その音に一瞬驚いたⅢは、その後、静かになった部屋の中でⅣに言いかけた言葉を続けた。


「Ⅳ兄様、ビスクドールを持ったままです…けど……」



御趣味は?
「トロン……僕は見てはいけないものを見てしまいました」
「どうしたのかな? Ⅲ」
「Ⅳ兄様の秘密の遊びを見てしまったんです」
「え!?」


end
(2011/12/29)
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