その他
暇つぶしの為に入ったコンビニで、凌牙は雑誌コーナーへと立ち寄った。
雑誌を買うつもりはさらさらないが、何気なく目についた雑誌を取り、パラパラとめくり始めた。
芸能系の根も葉もないゴシップ記事を眺め、途中何ページにも渡って入っていた特集が目に入ってきた。
エセくさい笑顔の張り付けられた人物の顔など見たくもなかったが、見出しが気になり手を止めた。
『極東エリアチャンピオンの知られざる素顔』
猫かぶりの紳士ズラをしたⅣの本性でも暴露されたのかと微妙に期待し、その特集を読み進めていった。
勿論、内容はあの完璧なエセ紳士の本性暴露などではなかったが、代わりに別の事が分かった。
「……おもしれぇじゃねぇか」
自然と口元が緩み、買う積りがなかった雑誌を片手に、凌牙はレジへと向かった。
「何ですかまったく。私はそれほど暇ではないんですよ?」
急な呼び出しに応えておきながら悪態をつくⅣ。
呼び出した張本人の凌牙はそんなⅣに対し、せいぜい今のうちに虚勢を張っておけと笑った。
「面白い雑誌があったんだよ、お前のな」
「はぁ? 最近雑誌の取材を受けた覚えはありませんよ」
誰が来るとも知れない場所柄、一様の丁寧語で喋るⅣはあからさまに顔を顰めた。
そんなⅣに凌牙は手に持っていた雑誌を投げ渡した。
投げ渡された雑誌を受け取ったⅣは、雑誌の表紙を見て鼻で笑った。
「随分と俗物的な雑誌ですねぇ。こんな物に私の記事があるとは思えませんけど?」
何かの勘違いでしょう、と凌牙の頭の心配をしながら苦笑するⅣ。
いいから読めと目で促す凌牙の手前、興味のないまま雑誌を広げ読み始めた。
「……ッ?! ――な、何だこの記事は!?」
雑誌を破り捨てる勢いで広げるⅣは、血走った目で特集を見た。
「随分と可愛らしい趣味があったんだな? 極東エリアのデュエルチャンピオンさん」
「肖像権侵害で訴えるぞッ、このゴミ雑誌が!!」
雑誌を引きちぎったⅣは、念入りに雑誌を丸め地面へと叩き付け踏みにじった。
エセ紳士の仮面が剥がれたⅣの態度を眺め、凌牙は冷静に口を開いた。
「後で弁償しろよ、その雑誌」
「ハッ! ま、まさか、こんな事実無根の記事を見せるためとは思いませんでしたね!! この紙屑に載っている記事を信じたんですか?! こ、この私が人形鑑賞が趣味? 信じる方がバカですよ!!」
声を裏返らせながら震える指で凌牙を指すⅣは、明らかに動揺していた。
「このページにでかでかと載ってる写真はお前だろ?」
「何冊持ってる気ですか貴方は!?」
地面へと叩き付けたものと全く同じ雑誌を広げ、見せつける凌牙にⅣは叫んだ。
「どうしようもない奴だとは思ってたが、まさか此処まで変態だったとは思ってなかったぜ。人形に名前とか付けてるのかよ?」
「そんな訳ないでしょう!! ただ一日の終わりに、寝る前に癒しを与えるだけの物体に名前などおこがましい!!」
「つまり、寝室は人形だらけか」
イメージがどんどん崩れてくな、と面白がりながら言う凌牙にⅣは冷や汗が出てきた。
「ひゃ、百歩譲って人形鑑賞が趣味だとして、それの何が悪いんですか!?」
「お前みたいな奴が似合わない人形を持ってるだけで十分すぎるほど悪いだろ」
「貴方のような人物に、彼女たちの素晴らしさは理解されたくもありませんね!!」
「本音が随分と出てきたな、Ⅳ? 結局認めてるぜ」
「くっ…! お、覚えてろよ凌牙!! お前に俺のストレスが分かってたまるか!!」
若干涙目で叫んだⅣは腕で涙を拭いながら走り去った。
捨て台詞を吐いて走っていったⅣを眺めた凌牙は、さすがにカラカイすぎたかと手元にあった雑誌に目を落とした。
「……あいつ、そんなにストレス溜まってたのかよ?」
可哀想な人がいます
「ハッ! あ、あんな奴にこの素晴らしい趣味が分かってたまるか! 仮にファンに俺の趣味がバレたところでどうなるモノでもないだろ!! むしろこれでファンからのプレゼント内容がバカみたいに変わるなら一石二鳥! もう髪の毛入りマフラーや指紋だらけのチョコや血で書かれた手紙が来ないと思うと清々しますねぇ!!」
end
(2011/12/28)
雑誌を買うつもりはさらさらないが、何気なく目についた雑誌を取り、パラパラとめくり始めた。
芸能系の根も葉もないゴシップ記事を眺め、途中何ページにも渡って入っていた特集が目に入ってきた。
エセくさい笑顔の張り付けられた人物の顔など見たくもなかったが、見出しが気になり手を止めた。
『極東エリアチャンピオンの知られざる素顔』
猫かぶりの紳士ズラをしたⅣの本性でも暴露されたのかと微妙に期待し、その特集を読み進めていった。
勿論、内容はあの完璧なエセ紳士の本性暴露などではなかったが、代わりに別の事が分かった。
「……おもしれぇじゃねぇか」
自然と口元が緩み、買う積りがなかった雑誌を片手に、凌牙はレジへと向かった。
「何ですかまったく。私はそれほど暇ではないんですよ?」
急な呼び出しに応えておきながら悪態をつくⅣ。
呼び出した張本人の凌牙はそんなⅣに対し、せいぜい今のうちに虚勢を張っておけと笑った。
「面白い雑誌があったんだよ、お前のな」
「はぁ? 最近雑誌の取材を受けた覚えはありませんよ」
誰が来るとも知れない場所柄、一様の丁寧語で喋るⅣはあからさまに顔を顰めた。
そんなⅣに凌牙は手に持っていた雑誌を投げ渡した。
投げ渡された雑誌を受け取ったⅣは、雑誌の表紙を見て鼻で笑った。
「随分と俗物的な雑誌ですねぇ。こんな物に私の記事があるとは思えませんけど?」
何かの勘違いでしょう、と凌牙の頭の心配をしながら苦笑するⅣ。
いいから読めと目で促す凌牙の手前、興味のないまま雑誌を広げ読み始めた。
「……ッ?! ――な、何だこの記事は!?」
雑誌を破り捨てる勢いで広げるⅣは、血走った目で特集を見た。
「随分と可愛らしい趣味があったんだな? 極東エリアのデュエルチャンピオンさん」
「肖像権侵害で訴えるぞッ、このゴミ雑誌が!!」
雑誌を引きちぎったⅣは、念入りに雑誌を丸め地面へと叩き付け踏みにじった。
エセ紳士の仮面が剥がれたⅣの態度を眺め、凌牙は冷静に口を開いた。
「後で弁償しろよ、その雑誌」
「ハッ! ま、まさか、こんな事実無根の記事を見せるためとは思いませんでしたね!! この紙屑に載っている記事を信じたんですか?! こ、この私が人形鑑賞が趣味? 信じる方がバカですよ!!」
声を裏返らせながら震える指で凌牙を指すⅣは、明らかに動揺していた。
「このページにでかでかと載ってる写真はお前だろ?」
「何冊持ってる気ですか貴方は!?」
地面へと叩き付けたものと全く同じ雑誌を広げ、見せつける凌牙にⅣは叫んだ。
「どうしようもない奴だとは思ってたが、まさか此処まで変態だったとは思ってなかったぜ。人形に名前とか付けてるのかよ?」
「そんな訳ないでしょう!! ただ一日の終わりに、寝る前に癒しを与えるだけの物体に名前などおこがましい!!」
「つまり、寝室は人形だらけか」
イメージがどんどん崩れてくな、と面白がりながら言う凌牙にⅣは冷や汗が出てきた。
「ひゃ、百歩譲って人形鑑賞が趣味だとして、それの何が悪いんですか!?」
「お前みたいな奴が似合わない人形を持ってるだけで十分すぎるほど悪いだろ」
「貴方のような人物に、彼女たちの素晴らしさは理解されたくもありませんね!!」
「本音が随分と出てきたな、Ⅳ? 結局認めてるぜ」
「くっ…! お、覚えてろよ凌牙!! お前に俺のストレスが分かってたまるか!!」
若干涙目で叫んだⅣは腕で涙を拭いながら走り去った。
捨て台詞を吐いて走っていったⅣを眺めた凌牙は、さすがにカラカイすぎたかと手元にあった雑誌に目を落とした。
「……あいつ、そんなにストレス溜まってたのかよ?」
可哀想な人がいます
「ハッ! あ、あんな奴にこの素晴らしい趣味が分かってたまるか! 仮にファンに俺の趣味がバレたところでどうなるモノでもないだろ!! むしろこれでファンからのプレゼント内容がバカみたいに変わるなら一石二鳥! もう髪の毛入りマフラーや指紋だらけのチョコや血で書かれた手紙が来ないと思うと清々しますねぇ!!」
end
(2011/12/28)