凌Ⅳ
「そう言えば凌牙。貴方知ってまして? Ⅳのブロマイドの事を」
「は?」
世間話でもするように切り出された話題。
ぞんざいな反応をした凌牙は、にこやかに笑う璃緒を見て、一歩下がった。
「あら? どうかしまして? 私はただ、Ⅳのブロマイドの事を訊いただけよ?」
「いや、なんでもない……」
その笑みは、絶対に何かあるだろとは強く言えず言葉を濁せば。
そんな事など気にもとめず相手は楽しげな笑顔を浮かべていた。
「Ⅳのブロマイドのように、貴方の写真が欲しいと言う子が、学校中に多くいる事は貴方も勿論知っていますわね?凌牙」
「……ああ」
「その子達が、どうしてもと私に頼みに、毎日来ますの」
「…………」
「そう、出来ればⅣと貴方が一緒に写っているような写真も欲しいと、それはもう毎日のように――」
「分かった、俺とⅣが並んだ写真を撮ればいいんだな」
「早い理解が貰えて、とても嬉しいですわ凌牙」
では、頼みましたよと笑顔のまま去っていく璃緒に、一刻も早く写真が必要だと思った。
みなまで言わせていたら、おそらく丁寧な愚痴を延々と聞かされていた。
「……あいつに頭を下げて頼むのは、イラッと来るけどな」
自分のイラつきと、妹の不機嫌。
天秤にかけるまでもない答えに、凌牙はD・ゲイザーを取り出しⅣへと連絡を入れた。
「……詐欺だろ」
一時間後。
現像された写真を手に、思わず凌牙は呟いた。
自分が不機嫌そうに写っているのは仕方ない。
そんな事は端から分かっている。
問題なのは隣にいる人物。
これはいったい誰なのかと、隣に写る人物の認識を拒否したい気分だった。
「写真うつりが悪いなぁ、凌牙? それに比べて俺なんて完璧だろ」
「その性格で、どうやればこんな表情が出るんだよ、Ⅳ」
儚げな微笑みを湛えて写る人物と、今ニヤニヤとした笑みを浮かべる人物が同一人物だと誰が思う。
画像加工なのか、いっそ画像加工だと言ってくれとⅣに対し詰め寄りたくなった。
「ファンサービスの賜物だ」
「ほぼ別人だろ」
フッと馬鹿にしたように笑い自慢げに言う相手を殴りたいと、素直に思った。
「で? スターの貴重な時間を潰して、写真まで撮らせてやったんだ。それなりの報酬は、考えてるんだろうな?」
「チッ!」
いやに写真撮影の許可を快く出したかと思えば理由はそれかと、凌牙は舌打ちをした。
複数の人物の手に渡る予定の写真など、自分なら願い下げの頼みごとだ。
いくらファンサービスがモットーだと常日頃言うような奴でも、タダではなかった。
ファン用の爽やかな笑みへと表情を変えたⅣは、さも微々たる対価だとばかりに提案を口にしだした。
「そうですねぇ? 一日デートでも来週しましょうか」
「……そんな事でいいのか?」
「ええ、勿論。全て君の奢りで」
「…………」
何にしても、Ⅳと共に写った写真は手に入った……報酬は高くついたが。
ただ、この写真を璃緒に渡した時、Ⅳとの写真だと理解されるのか甚だ疑問だった。
詐欺な写真
「……これは誰ですの?」
「正真正銘、撮る前は間違いなくⅣ…だった」
「詐欺ですわね」
「そうだろうな」
end
(2015/03/28)
「は?」
世間話でもするように切り出された話題。
ぞんざいな反応をした凌牙は、にこやかに笑う璃緒を見て、一歩下がった。
「あら? どうかしまして? 私はただ、Ⅳのブロマイドの事を訊いただけよ?」
「いや、なんでもない……」
その笑みは、絶対に何かあるだろとは強く言えず言葉を濁せば。
そんな事など気にもとめず相手は楽しげな笑顔を浮かべていた。
「Ⅳのブロマイドのように、貴方の写真が欲しいと言う子が、学校中に多くいる事は貴方も勿論知っていますわね?凌牙」
「……ああ」
「その子達が、どうしてもと私に頼みに、毎日来ますの」
「…………」
「そう、出来ればⅣと貴方が一緒に写っているような写真も欲しいと、それはもう毎日のように――」
「分かった、俺とⅣが並んだ写真を撮ればいいんだな」
「早い理解が貰えて、とても嬉しいですわ凌牙」
では、頼みましたよと笑顔のまま去っていく璃緒に、一刻も早く写真が必要だと思った。
みなまで言わせていたら、おそらく丁寧な愚痴を延々と聞かされていた。
「……あいつに頭を下げて頼むのは、イラッと来るけどな」
自分のイラつきと、妹の不機嫌。
天秤にかけるまでもない答えに、凌牙はD・ゲイザーを取り出しⅣへと連絡を入れた。
「……詐欺だろ」
一時間後。
現像された写真を手に、思わず凌牙は呟いた。
自分が不機嫌そうに写っているのは仕方ない。
そんな事は端から分かっている。
問題なのは隣にいる人物。
これはいったい誰なのかと、隣に写る人物の認識を拒否したい気分だった。
「写真うつりが悪いなぁ、凌牙? それに比べて俺なんて完璧だろ」
「その性格で、どうやればこんな表情が出るんだよ、Ⅳ」
儚げな微笑みを湛えて写る人物と、今ニヤニヤとした笑みを浮かべる人物が同一人物だと誰が思う。
画像加工なのか、いっそ画像加工だと言ってくれとⅣに対し詰め寄りたくなった。
「ファンサービスの賜物だ」
「ほぼ別人だろ」
フッと馬鹿にしたように笑い自慢げに言う相手を殴りたいと、素直に思った。
「で? スターの貴重な時間を潰して、写真まで撮らせてやったんだ。それなりの報酬は、考えてるんだろうな?」
「チッ!」
いやに写真撮影の許可を快く出したかと思えば理由はそれかと、凌牙は舌打ちをした。
複数の人物の手に渡る予定の写真など、自分なら願い下げの頼みごとだ。
いくらファンサービスがモットーだと常日頃言うような奴でも、タダではなかった。
ファン用の爽やかな笑みへと表情を変えたⅣは、さも微々たる対価だとばかりに提案を口にしだした。
「そうですねぇ? 一日デートでも来週しましょうか」
「……そんな事でいいのか?」
「ええ、勿論。全て君の奢りで」
「…………」
何にしても、Ⅳと共に写った写真は手に入った……報酬は高くついたが。
ただ、この写真を璃緒に渡した時、Ⅳとの写真だと理解されるのか甚だ疑問だった。
詐欺な写真
「……これは誰ですの?」
「正真正銘、撮る前は間違いなくⅣ…だった」
「詐欺ですわね」
「そうだろうな」
end
(2015/03/28)