凌Ⅳ

「まったく、人ごみの中で手をつながないと逸れそうになるなんて、貴方のどんくささには驚きますよ、凌牙」
「逸れそうになったのはそっちだろ」

ぶっちょう面のままⅣの手を握っていた凌牙は、ため息を吐く様に呟いた。
その反応にⅣは呆れた調子で返した。

「はぁ? そっちから握っておいてそれですか?」
「こっちは遅れそうになってるお前にわざわざ手を貸してやっただけだ」
「そんな事ある訳がありませんよ。責任転嫁にしてももう少し頭を使いましょうか?頭を」
「……だったら、離すぞ」
「あっ、おい!!」

手を離しそのままスタスタと歩き出す凌牙。
唐突に離された手に驚愕したⅣは足を速めて凌牙を追った。
数歩歩いてから唐突に凌牙は足を止め、Ⅳへと振り返った。

「あ?」

手を差し出してきた凌牙に、手を伸ばしたⅣは途中ではっと踏みとどまった。

「――ッ!! これじゃ俺がお前に手を握ってて欲しかったみたいになるだろ!?」
「みたいじゃなくてそのままだろ」

変にプライドの高いⅣの様子を見ながら、素直じゃねー奴と凌牙は苦笑した。


end
旧:拍手文
(2013/1/2~2/11)
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