凌Ⅳ

「Ⅲ、どうしてもついてくる気か」

ついてくるな、と目で訴えるⅣにⅢは笑顔で答えた。


「勿論です、Ⅳ兄様。兄様をみすみす狼の前になんかに晒してはおけませんから」
「俺は凌牙の所に行くだけだ!」
「Ⅳ兄様。男は狼だと言う格言を知らないんですか?」
「女にとってはだろ!?」
「凌牙がⅣ兄様に対して狼にならない保証はありません」

ニコニコと笑いながら、それでも断固として意見を曲げそうにないⅢ。
苛立っていたⅣは、いったん心を落ち着けて説得を試みることにした。


「いいか、Ⅲ。俺は今から凌牙と…まぁ……二人で水族館に行く予定だ」
「知ってます」
「なら分かるだろ。俺は、二人きりで水族館に行きたいんだよ」

そのためにわざわざこんな目立たないような服も着てるんだ、と念を押すようにⅣは言った。

「兄様がファンに気付かれないよう凌牙に会いたいと思っているのは分かります」
「だったらッ!」
「でも、兄様を凌牙と二人きりにするのは許可できません」
「いつも聞き分けのいいお前は何処へ行ったんだ!?」


そこまで分かってて何で邪魔するんだと叫ぶⅣ。
そんなⅣに態度を崩すでもなく、キッとした顔でⅢは断言した。


「そもそも、僕は凌牙と兄様が半径一km以内にいるのも許可できないぐらいだよ?」
「お前は過保護者か!? いい加減兄離れしろよ!」
「僕は兄様が心配で言ってるんです」


「~~ッ!! ――おい、Ⅴ! Ⅲの奴を説得してくれよ!!」


らちが明かないとばかりに、傍にいたⅤへとⅣは話を振った。
我関せずとばかりに本を読んでいたⅤは、本から少し視線を外して答えた。


「Ⅳ。Ⅲの言うことはもっともだ」
「肯定してんじゃねぇよ!!」

此処にはまともな意見を持ってる奴はいないのかとⅣは頭を掻き毟った。



ブラコン
「Ⅳ、さすがにコブ付きで来るとは思わなかったぜ」
「……凌牙。俺だって精一杯連れてこないよう頑張ったんだよ」
「Ⅳ兄様! 早く行きましょう!!」
「あー…分かったから引っ張るな、Ⅲ」


end
(2012/01/24)
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