凌Ⅳ

毎回毎回、何故自力で逃げ切らないのか。
何十回目になるかも忘れた手伝いを終えた凌牙は、さっさと降りたⅣの背を眺め、口を開いた。


「Ⅳ、ファンから逃げる時に俺をつかうのを止めろ」

Ⅲ達がいるホテルへと向かおうとしていたⅣは振り返り、不思議そうに相手を見た。

「はい?」
「お前なら別に俺じゃなくても、喜んで協力する奴ぐらいいるだろ」

何で毎回俺の所に来るんだ、と問うような視線を向ける凌牙。
その視線に、わかってませんねぇ、と大げさにⅣは落胆した様子を作った。

「そんなもの――」


ニッと意地が悪い笑みを浮かべⅣは答えを返した。


「お前を迷惑かけても構わない奴だって認識してるからに決まってるだろ」
「……Ⅳ。ちょっとツラかせ」
「口で言い返せないからと言って、暴力はいけませんねぇ」
「迷惑かけてもいい相手なんて思われてイラつかない奴がいるかよ」
「貴方に対する、私なりの甘えとでも思ってください」

軽口を叩くⅣに凌牙は耳を疑った。



甘えだと?
「分かりにくかったですか?」
「幻聴かと思う程度にはな」
「酷い言いようですね」


end
(2012/01/20)
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