右京先生受け

テスト期間
(等々力+遊馬)


「委員長、今日元気ないね……」

放課後の教室で、小鳥は等々力を見ながら呟いた。
その言葉に同意するように鉄男は頷いた。


「なんかずっとため息ばっかついてるよな」
「本当、どうしたんだろ……て、あれ? 遊馬は?」
「……あいつなら委員長の所に行ったぜ」


呆れ顔で言う鉄男の視線の先には、すでに等々力肩に手をかける遊馬がいた。


「委員長! 悩みがあるなら聞くぜ!!」


その様子を見た小鳥は、ため息をつきながら呟いた。

「もー……遊馬って本当にデリカシーがないんだから」
「まあ、いいんじゃねぇか? バカだけどきっかけにはなるぜ?」



「遊馬君、ですか」
「何か悩みがあんだろ委員長?」
「いえ、そんなことは」

等々力が否定するのを聞いて、遊馬に続くように近くに来ていた小鳥が口を開いた。


「でも、委員長、今日ずっとため息ばっかりついてるよ?」
「それは、もうすぐテスト期間に入ると思うと、少し嫌なだけで……」

憂鬱そうに呟く等々力、その話に遊馬は深く頷いた。


「わかる、分かるぜ委員長。俺もテストが近づくと憂鬱になるぜ」
「遊馬、成績悪いもんね」
「ひでっ!?」
「でもよぉ、委員長頭が良いんだし、そんなに深刻になるもんか?」


鉄男が顎に手を添えながら首を傾げた。
その問いに、言いづらそうに等々力は呟いた。


「テスト自体ではなく……テスト期間になる事が嫌なんです」
「何か違うのかよそれ?」

鉄男の疑問に、言葉が足りなかったと考え直した等々力はもう一度言い直した。


「僕は、とどのつまり、テスト期間で会える時間が少なくなる事が憂鬱の種なんです」

「誰に?」

今度は遊馬が首を傾げた。
そんな遊馬に等々力に聞こえない程度に鉄男と小鳥は忠告した。

「バカッ! 会えなくて憂鬱になるって言ったら決まってんだろ!」
「そうよ、無神経すぎ!」

後ろから鉄男と小鳥に小突かれ、遊馬は余計に訳が分からなくなった。


「え? いやわかんねーじゃん……」
「いいか、テスト期間イコール勉強しなきゃなんねー時」
「テスト期間になっちゃったら、あんまり自由な時間がなくなっちゃうでしょ」
「つまり、委員長は好きな子に会える時間がなくなっちまう事が憂鬱なんだよ」
「うそ、マジ!?」
「バッ、声がでけぇ!!」

遊馬の口を鉄男は慌てて塞いだ。
そんな鉄男達を横目に、小鳥は等々力を励ました。


「委員長、元気だそうよ。テストなんてすぐ終わっちゃうし」
「ええ、分かってます。少しの辛抱ですよね……」


遊馬達にこれ以上気を遣わせまいと、等々力は無理に笑いながら言った。

その後、とぼとぼと歩いていく等々力を見送った遊馬達は、暫くの間教室に残った。



自分達しかいない教室の中、遊馬はさっき聞けなかった事を訊いた。


「なー小鳥、委員長の好きな子って誰だよ?」
「さあ?」
「そー言や、俺もしらねーや」


end
(2011/06/10)
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