黒右京

◆黒白


「来るつもりは無かったんだけどね」

困ったように笑う右京に、相手は軽く目を細めた。

「お前が居たければいくらでもいればいい」

気休め程度に言った相手はまたプログラムの入力を始めた。
部屋にあるものは画面と入力端末のみ。
生活感の欠片もない部屋に、右京はこれが自分の望むものなのかと思いながら見た。

「どうしてとは問わない。理由なら見当がつく」

入力を続けながら独り言のように言う相手。
何でもお見通しかと言いかけ右京はやめた。
相手は自分でもあるのだから分かる事が当たり前だ。

「子供は時折嫌になるほどにバカだ。その上こちらの事をまるで考えない」
「……それは」

何を言っているのかが分かり、右京は口を噤んで相手の言葉を聞いた。

「答えなければよかった、自分の感情を出さなければよかった、どちらにとっても不幸にしかならないのだから」


(2011/10/01)
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