黒右京
◆噛み合わない
薄暗い室内、壁一面に映し出されるのは数字の羅列。
「此処に来て、慰めでも求めるつもりか?」
「そんなつもりはない」
振り返らずに相手に返答すれば、呆れたような苦笑が聞こえた。
「お前が求めるなら、与えてもよかった」
後ろから抱きしめ引き寄せる相手。
その腕に軽く手を添えながら画面に映し出されるプログラムを眺めた。
「此処は何故か心が落ち着く」
「好き好んで子供のわがままな感情に付き合わなくてもいい場所だ」
「やっぱり、私も何処かで完璧が好きなんだろうね」
「二度と外に出なければ、悩む事もなく過ごせるものを」
「でも、甘えたらいけないと分かってるから」
「…………」
後ろを振り向くと、口惜しそうな顔をする相手がいた。
行くなと口に出さない代わりに抱きついてくる相手。
完璧主義者で、求める物は手に入れたがって、分かりやすい素直な性格の相手。
子供をあやすように相手を抱きしめ返しながら、呟いた。
「私の方が、君よりよっぽど酷い人物だ」
(2011/07/28)
薄暗い室内、壁一面に映し出されるのは数字の羅列。
「此処に来て、慰めでも求めるつもりか?」
「そんなつもりはない」
振り返らずに相手に返答すれば、呆れたような苦笑が聞こえた。
「お前が求めるなら、与えてもよかった」
後ろから抱きしめ引き寄せる相手。
その腕に軽く手を添えながら画面に映し出されるプログラムを眺めた。
「此処は何故か心が落ち着く」
「好き好んで子供のわがままな感情に付き合わなくてもいい場所だ」
「やっぱり、私も何処かで完璧が好きなんだろうね」
「二度と外に出なければ、悩む事もなく過ごせるものを」
「でも、甘えたらいけないと分かってるから」
「…………」
後ろを振り向くと、口惜しそうな顔をする相手がいた。
行くなと口に出さない代わりに抱きついてくる相手。
完璧主義者で、求める物は手に入れたがって、分かりやすい素直な性格の相手。
子供をあやすように相手を抱きしめ返しながら、呟いた。
「私の方が、君よりよっぽど酷い人物だ」
(2011/07/28)