断片話

◆パラドックス


「お前、何見てんの?」
『クイズ番組と言うものだ。知識を得るために最適だと思って見ている』
「うげっ、クイズってかそれ勉強ものだろ」

それより違うの違うの、と遊馬はテレビのチャンネルを変えた。
急に変わったテレビから視線を外し、アストラルは遊馬を見た。

『遊馬、今答えが出るところだった』
「いいだろ別に、こっちの方が面白いし」
『ならば、君は出会い算と言うものが解けるのか?私は解けなかった』
「……戻せばいいんだろ」

うるさく言い続けそうなアストラルに対し、遊馬は仕方なくチャンネルを戻した。

「あれ、終わってる?」
『……遊馬』

じっと自分を見てくるアストラルに、遊馬は冷や汗を流した。



「右京先生! この答え教えて!!」

紙に書いた問題を見せながら遊馬は右京の元へと走り寄った。
急に見せられた紙を受け取り、出した覚えのない問題に右京は首を傾げ、それから、珍しいと思った。
問題がではなく、自分から数学の問題を解こうとする遊馬が珍しかった。

「委員長は解けたけど教えてくれないし。……答え聞けなくてアストラルの奴は煩いし」
「遊馬、今から時間はあるかな?」
「え?」
「やっぱり自分で解けた方が為になるから」

一緒に解こうか、と訊いてくる右京に対し、遊馬は深く考えずに頷いた。



出会い算。
『学校から家の距離600m。学校から少年が家に向かって分速60mで歩きます。
 犬が家から少年を迎えに分速140mで走ります。少年と犬は同時に出発しました。
 犬は少年に会うとすぐに家に向かって戻ります。そして、家に着くと少年に向かって走ります。
 これを犬は繰り返します。少年が家に着くまで、犬は何m走り続けますか?』


(2011/06/16)
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