断片話

◆眼鏡・別パターン


「だから! 本当にいるんだって!!」

フヨフヨと宙を漂うアストラルを指差す遊馬。
その言葉に呆れ顔で小鳥は呟いた。

「まーた遊馬が言ってる」
「遊馬君、とどのつまり、僕達には見えないのでその言葉が本当かは分かりようがありません」
「委員長、遊馬が必死になって言うことを否定しちゃ駄目だ。私は本当に存在していると思うよ?」
「右京先生! 先生なら分かってくれると思ったぜ!!」

感極まる遊馬の隣で、アストラルは冷静に呟いた。

『眼鏡は、それを装備した者の視力を上げる効果がある。もしや、この人物には私が見えているのか?』

「あー!? お前ッ、なに先生に近づいてんだよ!」
『……どうやら、眼鏡の効果を使っても私は見えないらしい。記憶しておこう』
「聞けよ人の話! 先生に近づき過ぎだって言ってんだろ!!」

スカスカと空振りする手。
捕まえられない事は承知の上だが、至近距離過ぎるアストラルの観察に遊馬は懸命に捕まえようとした。
遊馬の突然の行動に、小鳥は引き攣った顔をした。

「……遊馬、何か本当にどうかしちゃったみたい」
「とどのつまり、不審人物に見えますね」


(2011/06/08)
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