右京先生受け
キーホルダー
(凌牙+遊馬)
「何で俺はこいつに付き合ってるんだ?」
クレーンゲームに集中する遊馬を見ながら凌牙はポツリと呟いた。
休日の外出中、遊馬に発見と同時に逃げる暇も無く腕を掴まれ。
何をするのかと思えば、一緒に遊ぼうぜ、と言われ腕を引かれた。
ほぼ強制的にゲーセンへと連れてこられたかと思えば、色々なゲームの対戦相手。
そして今は、必死になってゲームに挑戦する遊馬の傍観。
もう帰ってもいいか、くらいは言いたくはなる。
「ああー!? また取れなかった!!」
何回目かのチャレンジを失敗した遊馬。
機械のガラスへとへばりつきながら悔しがる姿を見て凌牙は呆れた。
「下手だな」
「そう言うならシャークもやってみろよ!」
「ハッ、いいぜ?」
いい加減、傍観してるだけなのも飽きてきた。
コインを入れて、遊馬が今まで狙っていた物へと狙いを定めた。
「楽勝だったな」
「すっげー!!」
一回で取ったバグマンのキーホルダーを遊馬に見せながら凌牙は口を吊り上げた。
「これでお前が下手な事が証明されたな」
「なあ、シャーク! それくれよ!!」
「はあ?」
嫌味を言ったつもりなのに、何を考えてるんだと凌牙は眉を寄せた。
「右京先生に渡したいんだ!」
「右京? ……ああ、数学担当のか」
「あれ、シャーク右京先生知ってんの?」
「バカかよ。数学担当なら教えられてて当たり前だろ」
「でさあ! 右京先生って頭良いし! 優しいし! すっげー良い先生でさ!!」
「もういい、言うな。それ以上何も言うな」
担任を褒めるにしてはやけに熱の入った口調に凌牙は止めに入った。
延々と喋り続けそうな勢いだった遊馬は、水を差され不満げに口を尖らせた。
「ちぇー、何だよ」
「で? そこからどうしてコレを欲しがる理由になるんだ」
「右京先生がバグマン好きだから」
「……お前、もう少し人に理解できるように話せないのかよ?」
「だから、先生が好きだから俺が渡したいんだよ!」
「あーそうかよ」
遊馬に説明を要求するだけ無駄だと言う事はよく分かった、と凌牙は内心で続けた。
ようするに、尊敬している相手へ好きな物をプレゼントしたいからかと納得した。
納得した凌牙に対し遊馬は目を輝かせて期待した。
「じゃあ!」
「やらないけどな」
「ええー!?」
あれだけ気を持たせておきながら、と落胆したように遊馬は大声を出した。
「まあ、デュエルに勝ったら考えてもいいぜ?」
「よーし! じゃあ、デュエルしようぜシャーク!!」
「あ? おい!!」
凌牙の手を引いて駆け出す遊馬。
後ろからの制止の声を無視して公園の広場を目指した。
その後、何十戦と挑み続ける遊馬を前に、あの時渡しておけばよかったと凌牙は後悔した。
「もう一回! もう一回だけ!!」
「いい加減にしろよ!」
翌日、学校へと登校してきた凌牙は、昨日取った物を見ながらため息をつきたくなった。
「あいつ、本当にバカかよ……」
昨日の夕方まで、休む間もなく続けられたデュエル。
思い出すだけでもストレスになりそうだった。
「また挑んでくるだろうな」
放課後と言わず、昼休み中でも構わずデュエルを申し込みそうで怖い。
とりあえず、バグマンのキーホルダーがある限り遊馬は挑み続ける。
つまり、遊馬から逃れる為には捨てるか誰かに渡すかの2択。
遊馬に渡すのは癪に障る。
かと言って、捨てるのも自分がわざわざ取った手前忍びない。
誰かに渡そうにも、そんな人物がいる訳が、
「……いたな」
視線の先に右京を見つけ、凌牙は無意識に呟いた。
他の生徒へと挨拶をしていた右京へと近づき、凌牙は相手の目の前へとキーホルダーを付き出した。
「やるよ、あんたに」
「……私にかい?」
驚いたような顔をする右京に対し、凌牙は一瞬眉を寄せた。
何故ためらうのかと考え、自分の行動に固まった。
そもそも、札付きの不良から贈り物をされること自体が変だ。
しかも、それが教えたわけでもないのに本人の好みに合ったものだとしたら。
誰だって驚く。むしろ驚かない方が可笑しい。
『何考えてたんだ俺は!?』
何故一瞬でも考えなかった。
差し出した手を引っ込めるのも忘れ、凌牙は冷や汗を流した。
相手が冷や汗を流しているとも知らず、右京は驚いた表情から一変して顔を綻ばせた。
「ありがとう、大切にするよ」
「あ、ああ……」
笑顔で礼を言われ、何となく気まずい心境の中凌牙は右京へとバグマンのキーホルダーを渡した。
右京から離れた後、知らずに凌牙は顔が赤くなった。
「クソッ、全部あいつのせいだ!」
煩いほどに右京先生が、右京先生が、と言い続けた遊馬が悪い、と全責任を遊馬へと擦りつけた。
end
(2011/09/13)
(凌牙+遊馬)
「何で俺はこいつに付き合ってるんだ?」
クレーンゲームに集中する遊馬を見ながら凌牙はポツリと呟いた。
休日の外出中、遊馬に発見と同時に逃げる暇も無く腕を掴まれ。
何をするのかと思えば、一緒に遊ぼうぜ、と言われ腕を引かれた。
ほぼ強制的にゲーセンへと連れてこられたかと思えば、色々なゲームの対戦相手。
そして今は、必死になってゲームに挑戦する遊馬の傍観。
もう帰ってもいいか、くらいは言いたくはなる。
「ああー!? また取れなかった!!」
何回目かのチャレンジを失敗した遊馬。
機械のガラスへとへばりつきながら悔しがる姿を見て凌牙は呆れた。
「下手だな」
「そう言うならシャークもやってみろよ!」
「ハッ、いいぜ?」
いい加減、傍観してるだけなのも飽きてきた。
コインを入れて、遊馬が今まで狙っていた物へと狙いを定めた。
「楽勝だったな」
「すっげー!!」
一回で取ったバグマンのキーホルダーを遊馬に見せながら凌牙は口を吊り上げた。
「これでお前が下手な事が証明されたな」
「なあ、シャーク! それくれよ!!」
「はあ?」
嫌味を言ったつもりなのに、何を考えてるんだと凌牙は眉を寄せた。
「右京先生に渡したいんだ!」
「右京? ……ああ、数学担当のか」
「あれ、シャーク右京先生知ってんの?」
「バカかよ。数学担当なら教えられてて当たり前だろ」
「でさあ! 右京先生って頭良いし! 優しいし! すっげー良い先生でさ!!」
「もういい、言うな。それ以上何も言うな」
担任を褒めるにしてはやけに熱の入った口調に凌牙は止めに入った。
延々と喋り続けそうな勢いだった遊馬は、水を差され不満げに口を尖らせた。
「ちぇー、何だよ」
「で? そこからどうしてコレを欲しがる理由になるんだ」
「右京先生がバグマン好きだから」
「……お前、もう少し人に理解できるように話せないのかよ?」
「だから、先生が好きだから俺が渡したいんだよ!」
「あーそうかよ」
遊馬に説明を要求するだけ無駄だと言う事はよく分かった、と凌牙は内心で続けた。
ようするに、尊敬している相手へ好きな物をプレゼントしたいからかと納得した。
納得した凌牙に対し遊馬は目を輝かせて期待した。
「じゃあ!」
「やらないけどな」
「ええー!?」
あれだけ気を持たせておきながら、と落胆したように遊馬は大声を出した。
「まあ、デュエルに勝ったら考えてもいいぜ?」
「よーし! じゃあ、デュエルしようぜシャーク!!」
「あ? おい!!」
凌牙の手を引いて駆け出す遊馬。
後ろからの制止の声を無視して公園の広場を目指した。
その後、何十戦と挑み続ける遊馬を前に、あの時渡しておけばよかったと凌牙は後悔した。
「もう一回! もう一回だけ!!」
「いい加減にしろよ!」
翌日、学校へと登校してきた凌牙は、昨日取った物を見ながらため息をつきたくなった。
「あいつ、本当にバカかよ……」
昨日の夕方まで、休む間もなく続けられたデュエル。
思い出すだけでもストレスになりそうだった。
「また挑んでくるだろうな」
放課後と言わず、昼休み中でも構わずデュエルを申し込みそうで怖い。
とりあえず、バグマンのキーホルダーがある限り遊馬は挑み続ける。
つまり、遊馬から逃れる為には捨てるか誰かに渡すかの2択。
遊馬に渡すのは癪に障る。
かと言って、捨てるのも自分がわざわざ取った手前忍びない。
誰かに渡そうにも、そんな人物がいる訳が、
「……いたな」
視線の先に右京を見つけ、凌牙は無意識に呟いた。
他の生徒へと挨拶をしていた右京へと近づき、凌牙は相手の目の前へとキーホルダーを付き出した。
「やるよ、あんたに」
「……私にかい?」
驚いたような顔をする右京に対し、凌牙は一瞬眉を寄せた。
何故ためらうのかと考え、自分の行動に固まった。
そもそも、札付きの不良から贈り物をされること自体が変だ。
しかも、それが教えたわけでもないのに本人の好みに合ったものだとしたら。
誰だって驚く。むしろ驚かない方が可笑しい。
『何考えてたんだ俺は!?』
何故一瞬でも考えなかった。
差し出した手を引っ込めるのも忘れ、凌牙は冷や汗を流した。
相手が冷や汗を流しているとも知らず、右京は驚いた表情から一変して顔を綻ばせた。
「ありがとう、大切にするよ」
「あ、ああ……」
笑顔で礼を言われ、何となく気まずい心境の中凌牙は右京へとバグマンのキーホルダーを渡した。
右京から離れた後、知らずに凌牙は顔が赤くなった。
「クソッ、全部あいつのせいだ!」
煩いほどに右京先生が、右京先生が、と言い続けた遊馬が悪い、と全責任を遊馬へと擦りつけた。
end
(2011/09/13)