右京先生受け

硝子越し
(等々力→右京)


普段は黒縁の眼鏡に阻まれた色。
D・ゲイザーをかける時だけ、鮮明に見える瞳。
一番近くで見れる時は――



「どうしたのかな、委員長?」
「この問題が途中までしか出来なかったので教えて欲しいのですが」
「ああ、この問題だね」

覗き込むように画面を見る先生。
それに伴い、髪が影を作るようにサラリと落ちた。

その事を何処かもったいなく思いながら、先生の説明に耳を傾けた。




よく通る声で丁寧に説明してくれる先生。


不意に、説明を続ける先生へと手を伸ばしたくなった。
ゆるく癖の入った髪をよけ、不要な物を取り除いて。


もっと近くで、見たいと……



そこまで思考が脱線した時、自分が本当に手を浮かしかけている事に気付いた。




『――何をしようとしたんだ僕は!?』



とっさに手を膝へと置き、強く指を握った。
心臓の音がうるさいほどに聞こえ、意味もなく顔が熱くなるのが分かった。




「委員長? 顔が赤いようだけど熱でもあるのかな?」
「す、すみません! 何でもありません、気にしないでください!!」



今なら羞恥心で死ねる、本気でそう思った。


end
(2011/06/03)
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