ひらがな男子

かすかにまとう香りが気になった。
カラクリいじり中、やや綺麗好きのきらいがある『ぬ』から散らかし具合に関し小言を言われ。
聞いているのかとズイッと『ぬ』に近寄られた時にした香りが気になった。

『書家センセが部屋でたいてるやすらぎの葉?……に近ぇがなんか違うんだよな』

どうしてこうも気になるのかはわからないが。
香りの正体を知りたくなり、ふと相手の腕を掴んで顔を寄せれば。
驚き逃げようとして『ぬ』がバランスを崩し倒れ込んだので、思わず捕まえてしまった。


「貴様ッ、何を考えている!」

うなるように低く問う『ぬ』の声に流石にやりすぎたことを『た』は知った。

「たははは、ちと香りが気になってな」
「ぬぁぜ我が貴様に捕まり下敷きにされる」
「獲物は捕まえたくなるのが男ってもんだろ?押し倒しちまったのは悪いたぁ思うけどな」

なんのかんのと言いながらいつまでたっても退こうとしない相手の言葉に。
それほど気の長くない『ぬ』は怒りを爆発させた。


「早く退かぬかァアア!」



その日、バチーンと大きな音が屋敷中に響き渡り。
慌てて部屋の様子を見に来た『ぃ』と『ぁ』は目を丸くした。


「『た』のお兄ちゃんそのほっぺどうしたの~?」
「真っ赤にはれてるけど大丈夫?」

「たはははっ気にするな!」

「さっき『ぬ』の顔が真っ赤だったけど関係ある?」
「耳まで真っ赤だった~」

「たははは……」


end
(2025/10/21)
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