ひらがな男子
「うわ~珍しい」
ほとんど夜にしか屋敷に寄り付かないはずの『ぬ』を昼に見かけ。
ひらがな順でお隣の『ね』は思わずそう口にした。
「日あたりがいいもんね~寝たくなるのもわかるわかる」
いつも人を小ばかにした表情か不機嫌そうな顔しか見たことがない。
そんな相手が無防備にうたた寝をしている、これを珍しいと言わずして何を珍しいと言えばいいのか。
「黙ってると本当美人だねー?」
女の子達の可愛らしさとはまた違う方向で、それでも目を引くほどに美しい。
「でもそんなに険しい顔じゃなくてもいいのに」
悪夢でも見ているのだろうか、わずかに眉間にしわが寄る寝顔に思わず笑いそうになった。
「ねぇ、君は何を隠してるんだろうね?」
たった一人で何をしようとしているのか。
今は大人しくしているが、少し前まではひらがな男子を集める事を妨害してきた。
その行動の裏にいったい何を抱えているのだろうか。
「ま、きっと教えてくれないんだろうけどね」
どんな理由があれ大人しくしててくれるならそれに越したことはなく。
うたた寝をするには少しだけ肌寒い中、誰かがかけた海色の衣の下で眠る『ぬ』に対し。
『ね』は相手を起こさないように静かに歩き出した。
end
(2025/10/21)