小説

神は人間よりもはるかにキレやすい。
景品すくいに挑戦していた斉天大聖は破れ散らかしたポイを手に、ついにキレた。

「オイ、ふざけんじゃねぇぞ金角! クソ薄いポイばっか渡しやがって!」
「は~? テクの無さを他責にすんな糞猿がよぉ!」

バッチバチに火花を散らす斉天大聖と金角の口喧嘩が隣で勃発する中。
器いっぱいに取れてしまった景品を前に、プロメテウスは悩んでいた。

「思いの外すくい上げてしまったが、いいのか?」
「あー、いいって、いいって。隣のサルが下手くそなだけで普通これぐらい取れんのよ」

景品の袋詰めをする銀角は、当てこすりもいい所のセリフをしれっと述べ。
斉天大聖とは逆にプロメテウスにはやや厚めのポイを渡していた事に関しては言わなかった。
超上級者向けと初心者向けでポイを渡し分けるのは通常営業の範囲内、何一つとして問題はない。

プロメテウスが景品を受け取った時点で金角との口喧嘩を雑に斉天大聖は切り上げ。
リア充猿爆発しろ!との金角・銀角による祝言を背に受けながら屋台巡りを再開させた。


「つくづくどうなってやがんだまったく」

花見の一等地といえば、おのずと亜細亜の神界でも場所は限られてくる。
プロメテウスと共に花見に来た斉天大聖は、文句を言う奴も出てくるだろうなと予想はしていたが。
誰がお祭り屋台で的屋をやってる昔の強敵神共の想定をするというのか。
そして、ここまで地味に露骨な嫌がらせをしてくるのも予想外だった。

行く先々で昔の強敵に遭遇するのは仕様なのかと問いたくなるほどに絡まれ。
ようやく一息つけるところにプロメテウスと共に出た斉天大聖は、ベンチに座り込みながら頭を掻き。
おまけ超増量版の屋台の品を両腕いっぱいに持っていたプロメテウスは何と言ったものかと笑うしかなかった。

「まぁ気を取り直して食うか」
「ああ」

花見の醍醐味と言っても過言ではない屋台グルメ。
プロメテウスと分け合った後、これで不味かったら後で元強敵共に大笑いしに行ってやるかと。
さっそく一口食べた斉天大聖は、カッと目を見開き固まった。

「どうした、斉天大聖?」
「無駄にうめぇ…!」

これをあの神々が作ったのかと問いたくなるほど完成された屋台グルメに、悔しそうに斉天大聖は感想を零し。
亜細亜圏の本場の味は初であったプロメテウスは、斉天大聖の反応からこれが上位の物だと知った。

斉天大聖憎しで嫌がらせをする亜細亜の神々ではあったが、どこかしらで詰めが甘い対応ばかりだった。
妨害をするのであればもっと辛辣にもできただろうに、食品類に毒を盛ることも異物を入れることもない。
歓迎されていたのだろうかと、荒っぽくも優しみのある亜細亜の神々を思い出しプロメテウスはふと思った。



「で、初めての花見はどうだったよ?」

亜細亜の神々が制作した屋台グルメをあらかた食べ。
食後の甘味とばかりに三色団子を口にしていた斉天大聖はプロメテウスへと訊いた。

斉天大聖からの問いに、桜を眺めていたプロメテウスは名残惜し気に言葉を口にした。


「そうだな――またいつか、共に花を見れる日があると嬉しいものだ」
「なんだそりゃ、まるでこれっきりみたいな言いざまじゃねぇか」
「いや、ううむ……そう聞こえたか?」

そんなつもりではなかったのだがとプロメテウスが困り顔で口ごもり。
相手が意図しないのは百も承知だった斉天大聖はちょっとした意趣返しにしても言い過ぎたかと笑い。
改めて満開の桜が並ぶ景色を眺めた。亜細亜の神々が好む、嫌味なほどに綺麗な花を。


「もっとも、花なんてのは毎年咲いてるし代り映えもねえけどな」

一回見れば十分だと言われたら終いで、物珍しさも何回か行けば薄れていく。
せわしなく変わり続ける地上界ですら花は代り映えせず、神界ならばなおのこと。


「それでも俺は何回でも何十回でも、何百、何千、何万回でもアンタと一緒に見てぇよ」



また来ようぜ
いつかじゃなく、来年必ず。


end
(2025/04/12)
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