小説

花果山の大岩から生まれ幾星霜。
ここまで悩んだ経験はついぞねぇよと確信しながら斉天大聖・孫悟空は頭を悩ませた。


「デートってなァ、何処に誘やいいんだよ…!?」


悟浄や八戒が気を利かせ、かき集めに集めた経典、もとい、雑誌。
デートスポット特集を始め、天界観光名所・グルメ、他神界旅行記、宿泊施設、結婚式場。
やや気の早いブツも含め今まで手に取ることすらなかった書物の山、山、山。

これほどまでに集中して目を通したことがあったか、いや無い。
そう断言できる程度にはらしくないことをしている自覚はあった。


「あ~~~~……クソッッ、俺らしくもねえ」

もっと気軽に、さらっとスマートに、そんな風に誘えるなら苦労はしない。
読んでいた雑誌を一度閉じ、斉天大聖は呻きながら頭を掻きむしった。

人類を愛しているプロメテウスを喜ばせるなら。
地上界の歴史や文化を感じられる場所に連れて行けば花丸満点を叩き出せるだろう。
デートとしては論外中の論外でしかないが、喜ぶ姿は容易に想像できる。

人類に対し負けた気しかしないが。
あの希臘神ならば喜ぶだろうなと日ごろの様子からは想像できた。

「…………」


どこまでも愚直に人類を愛し、人類の罰を肩代わりしようとする最初の外天界神。
アポカリプスで闘い、紆余曲折、そんな石頭なところすら今は愛おしい。
黙り込んでいた斉天大聖は深々としたため息を吐き、覚悟を決めた。



惚れた弱み
「しゃーねえ、地上界の観光名所にも目を通しとくか」


end
(2025/03/27)
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