萌語り:ハデ始
◆箱庭楽園陵墓 ザナドゥー
(ハデ始)
戦う司書を読んでて、ふと特装版の色違い始皇帝の髪色が黒くなってたのを思い出し。
髪が一房だけ色が違う+人の痛みを感じとる体質とか戦う司書のラスボスもそうだったので。
虚無色の髪の石像/終章の獣と化す始皇帝とか似合いそうだなと思った事から。
FGOの特異点とかでラスボスやってる7回戦組とか見たくなった。
ぜひともカルデア一行とブリュンヒルデ+人類側闘士達で特異点で聖杯探索をして欲しい。
ギリシャ神界が特異点内を支配してる上に、長兄ハデスがトップとなってるとか。
カルデア一行と遭遇したブリュンヒルデ達の方は。
ギリシャ神のほとんどが特異点に引き抜かれた状態なので早くどうにかしたい。
取り合えず、特異点にいるギリシャ神達を全員ぶっ倒してニブルヘルさせないとヤバイ。
叩けば直る形式の究極系で神々が元の世界に戻って来ることができると分かってはいるが。
はぐれてしまったエインヘリャル達との合流なども含めて頭が痛い現状。
序盤でゼウス+ポセイドンが出てきて。
きゃぴっとした態度で軽々しく登場してきたゼウスに対して。
「あの戦闘愛好嗜虐変態神(エロジジイ)!!」とブリュンヒルデがブチギレるとか。
坊主共よ、早々に帰るなら見逃してやらんでもないぞ?と警告してくるゼウスに対し。
当然のことながら特異点の修正の為に帰る訳にはいかないカルデア一行。
しかたないのう、ちーと痛い目に合わんと分からんかと戦闘態勢に入るゼウス。
雑魚共などさっさと殺せばいいだろうとポセイドンはトライデントを手にしていて。
初っ端からラスボス戦!?みたいな状況になって欲しい。
勿論、序盤なので本格的戦闘には至らず。
ゼウス+ポセイドンとの遭遇、アダム+小次郎と合流、一時撤退の流れで。
敵側のギリシャ神達の会話に特異点に関するヒントが隠されていて。
ラスボスに対するキーパーソン的な存在として、政くん(7歳)がいるとか。
楽園のような場所で、誰にも傷付けられず、傷付くこともなく暮らしていて。
記憶は生前唯一幸せに満ちていた春燕と暮らしてた頃で途切れていて。
春燕の最期も、最高の王になる約束も、まだ知らない。
子供にされた始皇帝を見つけた一行は、始皇帝としての記憶が無い事を知る。
ハデスが始皇帝の記憶を奪い、箱庭のようなこの場所へと閉じ込めたと推測する周囲。
政を連れて行こうとすると、カルデア一行の行動を妨害するよう冥界の化け物が行く手を阻む。
連れてかれちゃまずいのが丸分かりなご登場だが、楽勝で全部ぶっ倒していくエインヘリャル達。
奪われた始皇帝の記憶はハデスの命令によりギリシャ神達が守っている事が判明し。
おそらく、何か不都合があるから奪われた可能性が高く、そこから推測されるのは。
始皇帝が特異点の核となった相手に対し、何かしらの特攻概念となるのでは?と。
ラグナロクでの戦いが影響しているならば分からなくもない話で。
どの道、ギリシャ神達を倒す必要性もあるので当面の方針が決まる。
戦乙女や闘士達は、最高の王である始皇帝の印象が強いので。
今は違うが記憶を取り戻せば力や姿が戻り問題は解決すると思ってるが。
政から見れば、ハデスの事は保護をしてくれていた神様だと思っていて。
カルデア一行が現れてからはずっと痛い事ばかりで、本当は嫌だと言いたいが。
それが許される空気ではなく、どうしてそんなに僕にばかり求めるのかと疑問で。
周囲が求めるのは始皇帝という存在のみで、自分ではないと心に刻まれていく。
徐々に始皇帝としての記憶や年齢は戻っていくが、一番肝心な春燕との約束は欠けたまま。
どうしてそれほどまでに最高の王として存在しないといけないのか理解できないままに。
本能で覚えた笑顔よりも強靭で美しい『王』という『鎧』を身にまとい。
始皇帝という存在を演じる人の子。
記憶を回収していく過程にて。
ラグナロクの焼き直しのように、ゼウスVSアダム、ポセイドンVS小次郎の戦いが発生。
ギリシャ最強三兄弟の内二柱を倒したことにより、生前のほぼ全ての記憶が戻る始皇帝。
ただ、春燕との約束と、自身の生前最期の記憶は欠けている。
その後、ハデスとのラスボス戦をするカルデア一行とか。
最後の一撃は始皇帝を演じている政の手によって、ハデスは胸を剣で貫かれ。
ラグナロクの焼き直しのように感じるが、冥王は目の前の相手を王として見る事はなく。
愛おしくも哀れな人の子を見つめながらニブルヘルする冥界の王。
これで全てが解決すると周囲は喜ぶが。
優しい神様が死んだことをどうして皆は喜ぶのかと始皇帝だけは不思議で。
自分を護ってくれていた神様を手にかけてしまった絶望と悲しみで胸が痛い。
けれど、始皇帝として存在するがゆえに表に出せないまま。
ハデスを殺したことで解放された生前最期の記憶が戻り。
呼吸ができないほどの苦しみを前に床へと崩れ落ち。
尋常ではない始皇帝の様子に一行が駆け寄ろうとした時。
誰もいないはずの玉座に座っている人物の存在に気付く。
視界に映るその髪色を、認識することを脳が拒絶する。
「好。よくぞ此処まで参った、褒めてつかわす」
一房だけ赤紫色が混じった虚無色の髪。
玉座から立ち上がり黒い中華服をなびかせ歩いてくる青年。
カルデア一行に同行していた戦乙女や闘士達が見間違えるはずもないその姿は。
中華における始まりの王。
同じ人物が二人?と疑問に思うが。
明らかに邪悪な存在と呼べる黒い始皇帝を前に、始皇帝の姿を纏った偽者だと思う一行。
んー、と口をへの字に曲げて周囲からの拒絶の言葉を受けとめる黒い始皇帝は。
随分と好き勝手なことを言うものだと、不快さもあらわに見下しの視線を向け。
元凶という言葉にふさわしいのは認めるが。
そもそもの原因は人類だと嗤う。
「朕はな、己の人生を呪ったのだ、生まれてきたことすら否定するほどに」
始皇帝の姿をした者の言葉に、ブリュンヒルデは現状の最悪さを理解する。
目の前に存在する相手は、『終末の獣』であると。
一人の善き人が絶望のうちに死に、自らが生きてきた人生の全てを呪い。
生まれてきた事そのものを否定した時にのみ発現する厄災。
神々に対する罰でもあるそれは、全てを終焉へと導く。
今までの事は全て賭けだったのだと種明かしをする黒い始皇帝。
抑止力として存在したハデスを殺した今、賭けは朕が勝ってしまうだろうなと告げる。
勝手な事を言うな!周囲は吠えるが。
黒い始皇帝は聞き流すように周囲の存在自体を無視して問いかける。
其方なら理解できるであろう?とうつむいたままでいる始皇帝へと。
周囲は始皇帝なら即座に相手の言葉を否定すると思っていたが。
始皇帝が一向に口を開かないので、何かあったのかと疑問視する。
そんな中。
するりと始皇帝へと近付いた黒い始皇帝は、目線を合わせるように跪き。
そっと相手の頬へと手を添えて顔を上げさせ、言葉を紡ぐ。
「嫌なら嫌だと言っていい」
春燕が教えてくれた誰にでも与えられた特権。
理不尽を怒っていいと、泣きたければ泣いていいと。
「そう言ってくれた春燕は、初めは周囲と同じく朕を恨んでいた」
所詮は代用品としてだったのだと。
春燕から向けられた愛の正体を始皇帝へと教え。
毒を流し込むように、哀れな人の子を抱きしめてやる終末の獣。
真実とは、ほんの少し切り取り方を変えてしまえばそれは何とも残酷で。
結局は、都合がいい存在であり続ける事を求められていた人生だったのだと。
始皇帝から引き剥がすよう黒い始皇帝へと攻撃を仕掛ける闘士達。
黒い始皇帝への対抗策が無い現状を前に一時撤退を選ぶカルデア一行。
おめおめと逃げ帰る一行へと、黒い始皇帝は自身を倒すためのヒントを与える。
完全なる記憶を手に入れた状態で、朕の事を否定してみせよと。
王としての始皇帝の根幹。
それすなわち、最高の王になるという春燕との約束。
重要すぎるほど重要な記憶が始皇帝から欠けていた事にようやく気付き。
若干後回しにしていたギリシャ神の元へと向かうカルデア一行+ブリュンヒルデ達。
すでに特異点における冥王ハデスの影響がないので協力を得られるはずと思っていたが。
予想反して、始皇帝の記憶をおいそれと渡す気はない態度をとられる。
なお、春燕との約束の記憶はヘルメスが所持していて。
ヘルメスと共に妨害するように戦いに出るのは軍神アレス。
どうしてそこまで敵対してくるのか分からないままに二柱と対峙する一同。
操られている様子は見受けられない中、何故そこまで冥王へと義理立てするのかと。
戦いに勝利してなお疑問符だらけの様子の人間達へと神は笑みを零す。
「身内にとても甘いんですよ、我々ギリシャ神は」
ギリシャ神の長兄としてあり続けた冥王が、初めて愛した者の為に行動していたから。
そこに大層な理由などなく、ただそれだけの理由で戦い、敗れた神々は消えていく。
始皇帝へと春燕との約束の記憶が戻り。
これで終末の獣との戦いも楽勝だと周囲が喜ぶ中。
今までずっと始皇帝の事を黙って見ていたジャックが、ふと疑問を投げかける。
貴方は本当は戦いたくはないのでは?と。
何を言い出すのかと周囲は驚き、そんなことある訳がないと思うが。
不意打ちの問いに対し始皇帝が一瞬血の気が引いた顔をした事で。
それが真実であると知る。
ジャックから『見た』始皇帝は、とても王として存在できるような色ではなく。
周囲の期待に応えるためだけに全てを我慢し、自身の感情を無理矢理に押し殺した。
泣くことが出来ない子供のような色に満ちていて。
王としての根幹たる記憶が欠けていたせい、というのは先ほどまでの話であり。
記憶が戻ってなお貴方の色は変わらなかった、そこでさらに問いましょう。
貴方から見た我々は、どのような存在でしたか?
仲間だと、思う根拠はおそらく貴方の中には無いはずで。
神が貴方の為に用意した箱庭の楽園から、我々は貴方を連れ出し。
貴方の内面など気にも留めずに王として存在することを理不尽にも求め。
おそらく貴方にとっての唯一の愛しき神様を、その手にかけさせた。
再度、問います。
貴方は、本当は我々の為になど戦いたくないのでは?
そう、淡々と紡がれていくジャックの言葉に揺さぶられ。
息すらできないほどに感情が渦巻き、答えを口に出来ないまま倒れ込む始皇帝。
蓄積していた疲労に極度の緊張感が追い打ちとなり気を失った相手に対し。
少々揺さぶり過ぎたようでと微塵の反省もなくジャックが言い。
気を失った始皇帝が寝台へと運び込まれた後。
さて、いかがいたしましょうかと笑いながら周囲へと問うジャック。
やらかしたい放題に場を引っ掻き回した殺人鬼に対し頭が痛いブリュンヒルデ。
明け方、誰もいない中で始皇帝は目覚め。
終末の獣が待つ玉座へと向かい一人で歩を進める。
特異点にて精神構造が子供のままに皆に連れられ旅をした影響は色濃く。
いつものように王として存在することが出来ないままに迷う。
王とは何かが分からなくなった。
春燕との約束ならば守りたい、けれど終末の獣の言葉が棘となり抜けない。
ただ誰かにとっての都合がいい存在であり続けるのが王として正しいのか。
都合よく利用され、最期は不要と身勝手に排除されたとしても。
理不尽な死すらも王ならば当然受け入れよというのか。
死してなおこの身を利用されることすらも。
終末の獣の事は否定しなければと思ってはいる。
それが、どれほどに現在の自分の感情では賛同したいとしても。
王としては許されるものでは無いと、分かってはいる。
迷い続ける始皇帝の前に、アダマスが現れる。
長兄ハデスの仇討ちだと攻撃を仕掛けてくる次兄アダマス。
向かってくる敵ならば容赦はないとアダマスと対峙する始皇帝。
戦いの果て、負けたアダマスは始皇帝へと記憶を投げ渡す。
アダマスが持ってた始皇帝の記憶は、ラグナロク7回戦での記憶。
あの戦いでハデスと対峙した人間の事はクソほど嫌いに決まってるが。
それでも、王としてハデスが認めるほどに最高の王だったことは確かで。
俺達の長兄が惚れたお前の生きざまを、お前だけは否定してくれるなと。
ギリシャ四兄弟の最後の一柱は悪態をつきながら散っていく。
ああ、そうであったなと、ハデスとの戦いの記憶を思い出した始皇帝は呟く。
王とは、惑わず、曲げず、頼らず、常に――民の先頭に立ち続ける。
それこそが王だと。それでこそ王だと。ほろ苦く笑みを浮かべ。
王として歩み続ける覚悟を決める。
カルデア+闘士達の方では、始皇帝抜きで終末の獣を倒す方向で話し合い。
要するに相手をぶっ倒せばいいんだろ!と単純明快な思考をぶちまける闘士達。
そもそも一人に頼り切りな状況の方が危うかったのだと。
始皇帝がいない状態で玉座の間へと向かうカルデア一行+ブリュンヒルデ達。
愚かな民達を玉座から見下ろし、その先頭に王がいない事に対し黒き始皇帝は嘲笑う。
「どうした?完全なる記憶を手に入れた朕に見捨てられたか?
――それとも、使い物にならぬと見捨てたか?」
其方らは一度でも気にかけてやった事はあったのかと。
何の疑いもなく、王としての責務を背負わせた相手が誰だったのかを。
始皇帝であるならば当然と、一人の人間として見ようともしなかった子供の事を。
自らの行いによる業を受けよ、傲慢なる民である其方らにふさわしき最期を贈ろう。
「虫けらのように圧し潰されよ」
玉座から動くことなく終末の獣は無尽蔵に巨人族を生み落としていき。
その形状がティターン神族やギガンテスに似ている事にブリュンヒルデが気付き。
特異点の原因となった聖杯には原初神ガイアが関わっていた可能性が高かったと知る。
とうの昔にギリシャの神々によって倒された原初神の残穢、あるいは呪いのような何か。
ギリシャ神界が原初神の襲来に徹底抗戦したギガントマキアにおいて、一番の功績者は誰だったのか。
冥王ハデスと関係深い人物が特異点の核となったのは偶然か否か。
終末の獣による圧倒的な物量戦により。
予想以上の苦戦を強いられ近付くことすら出来ないのかと絶望しそうになるが。
記憶を全て取り戻してきた始皇帝が先陣を切ったことにより状況は好転する。
王とは希望を示す概念。
近付くことすら不可能に近かった終末の獣への道を闘士達が切り開き。
道を駆け抜けた始皇帝が終末の獣の心臓へと剣を突き立てる。
玉座に磔にされた終わりを冠する王は、始まりの王へと問う。
己の人生を、呪わしくは思わないのかと。
生まれてきたこと自体を否定はしたくないのかと。
答えよと、何も映すことができなくなった瞳を獣は向け。
終末の獣へと与えた傷が体に刻まれていく中、始皇帝は困ったように眉を顰め。
呪わしい人生だった、生まれてきたこと自体を否定した其方の気持ちもわかる。
けれど、ハデスが惚れた王としての朕を否定したくはないのだと人の王は笑い。
たいそう我が儘でなんとも俗物にまみれた言葉を前に、終末の獣は苦笑し。
賭けは朕の負けだと言い残して消えていく。
聖杯の回収。
特異点の定礎復元。
それぞれの世界に戻るカルデア一行とブリュンヒルデ達。
終わってしまえば呆気なく、世界はいつも通りの日常へと戻る。
という感じの、FGOパロとか。
困難を乗り越える原動力が愛という王道な展開で。
いつもは王としてメンタルが強靭な始皇帝の弱った所が見たい。
ザナドゥー:桃源郷。
始皇帝にとっての皮肉的な場所。
また、土星(クロノス)の衛星タイタン(ティターン)の地形の名。
(2022/06/16)
(ハデ始)
戦う司書を読んでて、ふと特装版の色違い始皇帝の髪色が黒くなってたのを思い出し。
髪が一房だけ色が違う+人の痛みを感じとる体質とか戦う司書のラスボスもそうだったので。
虚無色の髪の石像/終章の獣と化す始皇帝とか似合いそうだなと思った事から。
FGOの特異点とかでラスボスやってる7回戦組とか見たくなった。
ぜひともカルデア一行とブリュンヒルデ+人類側闘士達で特異点で聖杯探索をして欲しい。
ギリシャ神界が特異点内を支配してる上に、長兄ハデスがトップとなってるとか。
カルデア一行と遭遇したブリュンヒルデ達の方は。
ギリシャ神のほとんどが特異点に引き抜かれた状態なので早くどうにかしたい。
取り合えず、特異点にいるギリシャ神達を全員ぶっ倒してニブルヘルさせないとヤバイ。
叩けば直る形式の究極系で神々が元の世界に戻って来ることができると分かってはいるが。
はぐれてしまったエインヘリャル達との合流なども含めて頭が痛い現状。
序盤でゼウス+ポセイドンが出てきて。
きゃぴっとした態度で軽々しく登場してきたゼウスに対して。
「あの戦闘愛好嗜虐変態神(エロジジイ)!!」とブリュンヒルデがブチギレるとか。
坊主共よ、早々に帰るなら見逃してやらんでもないぞ?と警告してくるゼウスに対し。
当然のことながら特異点の修正の為に帰る訳にはいかないカルデア一行。
しかたないのう、ちーと痛い目に合わんと分からんかと戦闘態勢に入るゼウス。
雑魚共などさっさと殺せばいいだろうとポセイドンはトライデントを手にしていて。
初っ端からラスボス戦!?みたいな状況になって欲しい。
勿論、序盤なので本格的戦闘には至らず。
ゼウス+ポセイドンとの遭遇、アダム+小次郎と合流、一時撤退の流れで。
敵側のギリシャ神達の会話に特異点に関するヒントが隠されていて。
ラスボスに対するキーパーソン的な存在として、政くん(7歳)がいるとか。
楽園のような場所で、誰にも傷付けられず、傷付くこともなく暮らしていて。
記憶は生前唯一幸せに満ちていた春燕と暮らしてた頃で途切れていて。
春燕の最期も、最高の王になる約束も、まだ知らない。
子供にされた始皇帝を見つけた一行は、始皇帝としての記憶が無い事を知る。
ハデスが始皇帝の記憶を奪い、箱庭のようなこの場所へと閉じ込めたと推測する周囲。
政を連れて行こうとすると、カルデア一行の行動を妨害するよう冥界の化け物が行く手を阻む。
連れてかれちゃまずいのが丸分かりなご登場だが、楽勝で全部ぶっ倒していくエインヘリャル達。
奪われた始皇帝の記憶はハデスの命令によりギリシャ神達が守っている事が判明し。
おそらく、何か不都合があるから奪われた可能性が高く、そこから推測されるのは。
始皇帝が特異点の核となった相手に対し、何かしらの特攻概念となるのでは?と。
ラグナロクでの戦いが影響しているならば分からなくもない話で。
どの道、ギリシャ神達を倒す必要性もあるので当面の方針が決まる。
戦乙女や闘士達は、最高の王である始皇帝の印象が強いので。
今は違うが記憶を取り戻せば力や姿が戻り問題は解決すると思ってるが。
政から見れば、ハデスの事は保護をしてくれていた神様だと思っていて。
カルデア一行が現れてからはずっと痛い事ばかりで、本当は嫌だと言いたいが。
それが許される空気ではなく、どうしてそんなに僕にばかり求めるのかと疑問で。
周囲が求めるのは始皇帝という存在のみで、自分ではないと心に刻まれていく。
徐々に始皇帝としての記憶や年齢は戻っていくが、一番肝心な春燕との約束は欠けたまま。
どうしてそれほどまでに最高の王として存在しないといけないのか理解できないままに。
本能で覚えた笑顔よりも強靭で美しい『王』という『鎧』を身にまとい。
始皇帝という存在を演じる人の子。
記憶を回収していく過程にて。
ラグナロクの焼き直しのように、ゼウスVSアダム、ポセイドンVS小次郎の戦いが発生。
ギリシャ最強三兄弟の内二柱を倒したことにより、生前のほぼ全ての記憶が戻る始皇帝。
ただ、春燕との約束と、自身の生前最期の記憶は欠けている。
その後、ハデスとのラスボス戦をするカルデア一行とか。
最後の一撃は始皇帝を演じている政の手によって、ハデスは胸を剣で貫かれ。
ラグナロクの焼き直しのように感じるが、冥王は目の前の相手を王として見る事はなく。
愛おしくも哀れな人の子を見つめながらニブルヘルする冥界の王。
これで全てが解決すると周囲は喜ぶが。
優しい神様が死んだことをどうして皆は喜ぶのかと始皇帝だけは不思議で。
自分を護ってくれていた神様を手にかけてしまった絶望と悲しみで胸が痛い。
けれど、始皇帝として存在するがゆえに表に出せないまま。
ハデスを殺したことで解放された生前最期の記憶が戻り。
呼吸ができないほどの苦しみを前に床へと崩れ落ち。
尋常ではない始皇帝の様子に一行が駆け寄ろうとした時。
誰もいないはずの玉座に座っている人物の存在に気付く。
視界に映るその髪色を、認識することを脳が拒絶する。
「好。よくぞ此処まで参った、褒めてつかわす」
一房だけ赤紫色が混じった虚無色の髪。
玉座から立ち上がり黒い中華服をなびかせ歩いてくる青年。
カルデア一行に同行していた戦乙女や闘士達が見間違えるはずもないその姿は。
中華における始まりの王。
同じ人物が二人?と疑問に思うが。
明らかに邪悪な存在と呼べる黒い始皇帝を前に、始皇帝の姿を纏った偽者だと思う一行。
んー、と口をへの字に曲げて周囲からの拒絶の言葉を受けとめる黒い始皇帝は。
随分と好き勝手なことを言うものだと、不快さもあらわに見下しの視線を向け。
元凶という言葉にふさわしいのは認めるが。
そもそもの原因は人類だと嗤う。
「朕はな、己の人生を呪ったのだ、生まれてきたことすら否定するほどに」
始皇帝の姿をした者の言葉に、ブリュンヒルデは現状の最悪さを理解する。
目の前に存在する相手は、『終末の獣』であると。
一人の善き人が絶望のうちに死に、自らが生きてきた人生の全てを呪い。
生まれてきた事そのものを否定した時にのみ発現する厄災。
神々に対する罰でもあるそれは、全てを終焉へと導く。
今までの事は全て賭けだったのだと種明かしをする黒い始皇帝。
抑止力として存在したハデスを殺した今、賭けは朕が勝ってしまうだろうなと告げる。
勝手な事を言うな!周囲は吠えるが。
黒い始皇帝は聞き流すように周囲の存在自体を無視して問いかける。
其方なら理解できるであろう?とうつむいたままでいる始皇帝へと。
周囲は始皇帝なら即座に相手の言葉を否定すると思っていたが。
始皇帝が一向に口を開かないので、何かあったのかと疑問視する。
そんな中。
するりと始皇帝へと近付いた黒い始皇帝は、目線を合わせるように跪き。
そっと相手の頬へと手を添えて顔を上げさせ、言葉を紡ぐ。
「嫌なら嫌だと言っていい」
春燕が教えてくれた誰にでも与えられた特権。
理不尽を怒っていいと、泣きたければ泣いていいと。
「そう言ってくれた春燕は、初めは周囲と同じく朕を恨んでいた」
所詮は代用品としてだったのだと。
春燕から向けられた愛の正体を始皇帝へと教え。
毒を流し込むように、哀れな人の子を抱きしめてやる終末の獣。
真実とは、ほんの少し切り取り方を変えてしまえばそれは何とも残酷で。
結局は、都合がいい存在であり続ける事を求められていた人生だったのだと。
始皇帝から引き剥がすよう黒い始皇帝へと攻撃を仕掛ける闘士達。
黒い始皇帝への対抗策が無い現状を前に一時撤退を選ぶカルデア一行。
おめおめと逃げ帰る一行へと、黒い始皇帝は自身を倒すためのヒントを与える。
完全なる記憶を手に入れた状態で、朕の事を否定してみせよと。
王としての始皇帝の根幹。
それすなわち、最高の王になるという春燕との約束。
重要すぎるほど重要な記憶が始皇帝から欠けていた事にようやく気付き。
若干後回しにしていたギリシャ神の元へと向かうカルデア一行+ブリュンヒルデ達。
すでに特異点における冥王ハデスの影響がないので協力を得られるはずと思っていたが。
予想反して、始皇帝の記憶をおいそれと渡す気はない態度をとられる。
なお、春燕との約束の記憶はヘルメスが所持していて。
ヘルメスと共に妨害するように戦いに出るのは軍神アレス。
どうしてそこまで敵対してくるのか分からないままに二柱と対峙する一同。
操られている様子は見受けられない中、何故そこまで冥王へと義理立てするのかと。
戦いに勝利してなお疑問符だらけの様子の人間達へと神は笑みを零す。
「身内にとても甘いんですよ、我々ギリシャ神は」
ギリシャ神の長兄としてあり続けた冥王が、初めて愛した者の為に行動していたから。
そこに大層な理由などなく、ただそれだけの理由で戦い、敗れた神々は消えていく。
始皇帝へと春燕との約束の記憶が戻り。
これで終末の獣との戦いも楽勝だと周囲が喜ぶ中。
今までずっと始皇帝の事を黙って見ていたジャックが、ふと疑問を投げかける。
貴方は本当は戦いたくはないのでは?と。
何を言い出すのかと周囲は驚き、そんなことある訳がないと思うが。
不意打ちの問いに対し始皇帝が一瞬血の気が引いた顔をした事で。
それが真実であると知る。
ジャックから『見た』始皇帝は、とても王として存在できるような色ではなく。
周囲の期待に応えるためだけに全てを我慢し、自身の感情を無理矢理に押し殺した。
泣くことが出来ない子供のような色に満ちていて。
王としての根幹たる記憶が欠けていたせい、というのは先ほどまでの話であり。
記憶が戻ってなお貴方の色は変わらなかった、そこでさらに問いましょう。
貴方から見た我々は、どのような存在でしたか?
仲間だと、思う根拠はおそらく貴方の中には無いはずで。
神が貴方の為に用意した箱庭の楽園から、我々は貴方を連れ出し。
貴方の内面など気にも留めずに王として存在することを理不尽にも求め。
おそらく貴方にとっての唯一の愛しき神様を、その手にかけさせた。
再度、問います。
貴方は、本当は我々の為になど戦いたくないのでは?
そう、淡々と紡がれていくジャックの言葉に揺さぶられ。
息すらできないほどに感情が渦巻き、答えを口に出来ないまま倒れ込む始皇帝。
蓄積していた疲労に極度の緊張感が追い打ちとなり気を失った相手に対し。
少々揺さぶり過ぎたようでと微塵の反省もなくジャックが言い。
気を失った始皇帝が寝台へと運び込まれた後。
さて、いかがいたしましょうかと笑いながら周囲へと問うジャック。
やらかしたい放題に場を引っ掻き回した殺人鬼に対し頭が痛いブリュンヒルデ。
明け方、誰もいない中で始皇帝は目覚め。
終末の獣が待つ玉座へと向かい一人で歩を進める。
特異点にて精神構造が子供のままに皆に連れられ旅をした影響は色濃く。
いつものように王として存在することが出来ないままに迷う。
王とは何かが分からなくなった。
春燕との約束ならば守りたい、けれど終末の獣の言葉が棘となり抜けない。
ただ誰かにとっての都合がいい存在であり続けるのが王として正しいのか。
都合よく利用され、最期は不要と身勝手に排除されたとしても。
理不尽な死すらも王ならば当然受け入れよというのか。
死してなおこの身を利用されることすらも。
終末の獣の事は否定しなければと思ってはいる。
それが、どれほどに現在の自分の感情では賛同したいとしても。
王としては許されるものでは無いと、分かってはいる。
迷い続ける始皇帝の前に、アダマスが現れる。
長兄ハデスの仇討ちだと攻撃を仕掛けてくる次兄アダマス。
向かってくる敵ならば容赦はないとアダマスと対峙する始皇帝。
戦いの果て、負けたアダマスは始皇帝へと記憶を投げ渡す。
アダマスが持ってた始皇帝の記憶は、ラグナロク7回戦での記憶。
あの戦いでハデスと対峙した人間の事はクソほど嫌いに決まってるが。
それでも、王としてハデスが認めるほどに最高の王だったことは確かで。
俺達の長兄が惚れたお前の生きざまを、お前だけは否定してくれるなと。
ギリシャ四兄弟の最後の一柱は悪態をつきながら散っていく。
ああ、そうであったなと、ハデスとの戦いの記憶を思い出した始皇帝は呟く。
王とは、惑わず、曲げず、頼らず、常に――民の先頭に立ち続ける。
それこそが王だと。それでこそ王だと。ほろ苦く笑みを浮かべ。
王として歩み続ける覚悟を決める。
カルデア+闘士達の方では、始皇帝抜きで終末の獣を倒す方向で話し合い。
要するに相手をぶっ倒せばいいんだろ!と単純明快な思考をぶちまける闘士達。
そもそも一人に頼り切りな状況の方が危うかったのだと。
始皇帝がいない状態で玉座の間へと向かうカルデア一行+ブリュンヒルデ達。
愚かな民達を玉座から見下ろし、その先頭に王がいない事に対し黒き始皇帝は嘲笑う。
「どうした?完全なる記憶を手に入れた朕に見捨てられたか?
――それとも、使い物にならぬと見捨てたか?」
其方らは一度でも気にかけてやった事はあったのかと。
何の疑いもなく、王としての責務を背負わせた相手が誰だったのかを。
始皇帝であるならば当然と、一人の人間として見ようともしなかった子供の事を。
自らの行いによる業を受けよ、傲慢なる民である其方らにふさわしき最期を贈ろう。
「虫けらのように圧し潰されよ」
玉座から動くことなく終末の獣は無尽蔵に巨人族を生み落としていき。
その形状がティターン神族やギガンテスに似ている事にブリュンヒルデが気付き。
特異点の原因となった聖杯には原初神ガイアが関わっていた可能性が高かったと知る。
とうの昔にギリシャの神々によって倒された原初神の残穢、あるいは呪いのような何か。
ギリシャ神界が原初神の襲来に徹底抗戦したギガントマキアにおいて、一番の功績者は誰だったのか。
冥王ハデスと関係深い人物が特異点の核となったのは偶然か否か。
終末の獣による圧倒的な物量戦により。
予想以上の苦戦を強いられ近付くことすら出来ないのかと絶望しそうになるが。
記憶を全て取り戻してきた始皇帝が先陣を切ったことにより状況は好転する。
王とは希望を示す概念。
近付くことすら不可能に近かった終末の獣への道を闘士達が切り開き。
道を駆け抜けた始皇帝が終末の獣の心臓へと剣を突き立てる。
玉座に磔にされた終わりを冠する王は、始まりの王へと問う。
己の人生を、呪わしくは思わないのかと。
生まれてきたこと自体を否定はしたくないのかと。
答えよと、何も映すことができなくなった瞳を獣は向け。
終末の獣へと与えた傷が体に刻まれていく中、始皇帝は困ったように眉を顰め。
呪わしい人生だった、生まれてきたこと自体を否定した其方の気持ちもわかる。
けれど、ハデスが惚れた王としての朕を否定したくはないのだと人の王は笑い。
たいそう我が儘でなんとも俗物にまみれた言葉を前に、終末の獣は苦笑し。
賭けは朕の負けだと言い残して消えていく。
聖杯の回収。
特異点の定礎復元。
それぞれの世界に戻るカルデア一行とブリュンヒルデ達。
終わってしまえば呆気なく、世界はいつも通りの日常へと戻る。
という感じの、FGOパロとか。
困難を乗り越える原動力が愛という王道な展開で。
いつもは王としてメンタルが強靭な始皇帝の弱った所が見たい。
ザナドゥー:桃源郷。
始皇帝にとっての皮肉的な場所。
また、土星(クロノス)の衛星タイタン(ティターン)の地形の名。
(2022/06/16)