萌語り:ハデ始

◆観用パロ
(ハデ始)

GWキャンペーンで『観用少女』を一気見してきた影響で浮かんだ、観用人形パロ。
店主はジャックor釈迦で、始皇帝は秦王(12歳)ぐらいに育ってしまったお人形とか。

新品だった頃は政(7歳)ぐらいの姿で、天国の涙目的で買われてしまい。
元の気質が人懐こい性格ゆえに目覚めたが、愛は与えてもらえなくて。
さっさと涙を流せと、周囲から向けられる視線はいつも冷たくて。
それでも笑顔でいるけど、どうしても歪な笑顔しか浮かべられなくて。
天国の涙が最高に愛された人形からしか取れないらしいと調べがついたことから。
世話係として春燕が雇われるとか。

初めの内は多少のぎこちなさはあったものの。
次第に世話係と観用人形の間に信頼関係が築かれていき。
愛されてる事が一目で分かるほどに人形が楽しげに笑うようになった頃。
世話係の春燕は殺され、人形にとっての幸福な時間は、たやすく壊れていった。

涙を流すようになった人形は強制的に延命され続け。
おかしなほどに天国の涙が出回るようになり調査され。
その後、警察の介入もあり事件は白日の下に晒されたが。
劣悪な環境に置かれていた人形はすっかりと育っていて。
メンテナンスは施されたが以降ずっと眠り続けていて。
涙はすでに枯れ果てた。

そんな事情がある中古の観用人形が売れるはずもなく。
店主も売る事に積極的ではなく、人形の意思を尊重していて。
まるで隠してあったかのように鎮座する始皇帝を、ハデスが見つけるとか。

育ってしまった中古の人形に価値はない。
まして笑みを振りまくことのない人形など無価値に等しい。
それでも、新品の観用人形ですら軽々と購入できる財力はあったが。
店主から人形の経歴を聞いてなおハデスはそのまま始皇帝を購入し。

感情に乏しい人形との生活は穏やかで。
いまだに人形には表情が浮かぶことはないが、それでも構わなかった。
少しずつ意思表示をするようになった人形と、ゆっくりと距離が縮まっていき。
無断でベッドに潜り込んでくるようになった姿すら愛おしいと思い始め。
初めて人形が浮かべる笑みを見た時は、呆気にとられた。

今までの無表情は何だったのかと思うほどに人形はニコニコと楽しげに笑みを浮かべ。
最近では意思表示も明確になり、思いのほか行動的で元気があり。
好(ハオ)、と人形が口にする音は言葉のようにも聞こえ。
少しばかり騒がしくはなったが、それもまた好ましく。
ただ一つ欲を言うなら、目隠しの下の瞳が知りたい。

みたいな感じの観用パロ。
ずっと目隠しをしてる人形の始皇帝と、購入者のハデスとか。

その後の展開は。
天国の涙目的の者は多くいるために事件に巻き込まれて攫われて。
涙を流すことを強要されフラッシュバックが起きた人形は限界状態で。
始皇帝を取り戻す過程でハデスが多少の無茶をして怪我を負い。
ようやく安全な場所に戻ってこれた頃には疲れきっていて座り込み。

泣きそうな表情でいる人形へと、安心させるように頬を撫でてやり。
初めて見るものだなと、目隠しが取り払われた瞳を眺め言葉にすれば。
人形から、柘榴色の天国の涙が零れ落ちていくとか。

泣き止むまで抱きしめてやり、早く泣き止めと慰めるように口付け。
その後、口付けによってさらに育った人形は、ほぼ人間に近くなり。
人形をあえて育て恋人にする持ち主の事例は少なくはないが。
事の顛末を聞いた店主は若干呆れるとか。
幸せであれば無問題。


(2022/04/29)
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