萌語り:ハデ始
◆正妻
(ハデ始)
明言されてないシュレーディンガーの猫状態の内にしか出来ないネタとして。
まだ終ワルの世界でも存在するかどうかすら分からないので、あくまで仮定で。
ペルセポネがいる世界軸にて、救いようがないほどに泥沼に拗れる神と人の話とか見たい。
ハデスから愛を告げられようと、のらりくらりと始皇帝が王としてスルーしまくり。
もはやそういうものだと、ハデスの方が諦め気味になるほどで。
それなりの距離感をもって友達付き合いしている王様達だったが。
恋愛に関して不器用な夫を見かねて、ペルセポネが直談判しに行くとか。
自分に遠慮して始皇帝が夫を避けてると思い。
1年の1/3しか冥界にはいないから遠慮しないでと提案するが。
始皇帝の方は、現状の関係で満足しているので提案自体が端から論外で。
そうこうペルセポネと関わってる間に、ハデスに正妻との関係を疑われて釘を刺されるとか。
朕を愛していると一時は言った口で、愛しい正妻へと関わるなと警告を言い放つのかと。
ハデスからの視線で体に傷が浮かび、神の理不尽さに打ちひしがれる始皇帝とか。
ずっと目隠しを解いてもいいと、思えたはずの相手からの視線で身を灼かれ。
痛みを誤魔化すように朗らかな声で大いに冥界の王の発言に対し笑い。
その後、無問題といつものように王として振舞いながら。
二度と関わらない事を人は神へと誓う。
痛い、痛い、痛い。
それなりの距離感をようやく形成できたはずだったのに。
分不相応に神の愛を受け取ることなく、全てを諦めたのに。
何故これほどに、いともたやすく幸福な時は崩れていくのか。
――あぁ、痛い。
自室の寝台にて一人、体を丸めて人間は傷の痛みに耐えるが。
なおもまだ身を灼き浮かび上がり続ける神の悋気の証は消える気配もなく。
そのまま、気絶するように意識が遠のき人の王は眠りにつく。
実の所、それなりに始皇帝の方もハデスを愛してはいたとか。
人の王として存在するがゆえに愛へと溺れる事すらできず。
神の気まぐれなる愛など信じていいのかと躊躇し。
相手から捨てられることが酷く怖くて。
ただ、そばにいるだけで満足だったのだと。
すっかりと痛みを感じなくなった身体で、人は眠りから覚める。
感覚がバグって痛みを感じなくなった始皇帝とか。
痛みを知ることすら出来なくなった=人の痛みを知ることのできる最高の王ではない。
傷から、痛みから、一時でも逃げたいと思ってしまった事すら恥ずべき考えであり。
自分は『始皇帝』という最高の王でい続けなければ価値が無いというのに。
春燕との約束すら守れないのかと人の子は自己嫌悪し、己を戒める。
より一層、王という存在であり続けなければならないと。
個人としての願望など持つべきではなかったのだと。
全ては分不相応な自分が悪く。
これは罰に違いないと。
すでに神をもってしても救いようがないほどに話は拗れるが。
表面上は何事もないように、いつも通りという名の日常が流れ。
神が何もしなければ壊れる事はないが、いつまでも危険性は潜んだままで。
気付かないままにいる方が悲劇か、気付き想いをぶつけ合う方が正しいかは、不明。
この後の展開を考えるとするなら。
ペルセポネの方が始皇帝の変化に気付いて、ハデスへと知らせて。
多少強引な手ではあるが始皇帝から本音を聞き出そうとハデスは考えて。
途中、始皇帝が痛みを感じていない事に気付いて何故黙っていたのかと怒り。
無問題だといつもの調子で飄々と始皇帝が気にした様子もなく王として振舞うので。
痛みを知るからこそ最高の王だと言っていたはずだが?と皮肉気に言ってしまい。
やはり、痛みを感じられぬ朕では王としての価値はないか、と人間が零し。
たかがその程度で王として揺るぐなど神にとっては許せぬことで。
余が認めた王である貴様が、何故その程度のことで揺るぐのかと苛立ち。
ならば、王として存在するなと、いつまでも王として振舞う始皇帝の矛盾を指摘し。
今しがた己に王としての価値はないと決めつけたのは貴様の方だと、神は冷淡に考える。
神から始皇帝という存在の重要部分を否定されたが。
始皇帝はまだ王としてあり続けようとして、その事がなおハデスの苛立ちへと油を注ぎ。
見苦しいものだと、王ではない始皇帝を神は求める。
今まで強引な手段に出る事が無かったはずのハデスからの求めに。
互いに王として認めあい、対等な存在であったという前提の崩壊を覚え。
神の手から逃れようと始皇帝はもがくが、人間の抵抗など神にとっては些事で。
朕は王だと、王でいなければならないのだと、人の子は叫び。
王でなくなったとしても愛してやると神は告げる。
誰も一番には愛してくれない中、また不要だと捨てられたとしたら。
春燕と約束した王ですらなくなった自分にどれほどの価値があるのかと。
何もかもが分からなくなった人の子はハデスの言葉に知らずに抵抗を止め。
ただ、始皇帝という王として其方のそばにい続けたかったものだと、全てを諦める。
望まれたことを、望まれたままに。
神が望むのは、王としての自分ではなかったのだと。
人間と神の時間感覚の差は大きく異なり。
己の生前の一生分よりも長くハデスに愛され。
二度と関わらないと人が神へと誓った事は、正妻の要望により取り消されて久しく。
とある日の昼下がり、人の子はペルセポネと共に茶を飲み、たわいない会話を交わす。
痛みを感じることのなくなった身体は、いまだに治ることはない。
(2022/04/22)
(ハデ始)
明言されてないシュレーディンガーの猫状態の内にしか出来ないネタとして。
まだ終ワルの世界でも存在するかどうかすら分からないので、あくまで仮定で。
ペルセポネがいる世界軸にて、救いようがないほどに泥沼に拗れる神と人の話とか見たい。
ハデスから愛を告げられようと、のらりくらりと始皇帝が王としてスルーしまくり。
もはやそういうものだと、ハデスの方が諦め気味になるほどで。
それなりの距離感をもって友達付き合いしている王様達だったが。
恋愛に関して不器用な夫を見かねて、ペルセポネが直談判しに行くとか。
自分に遠慮して始皇帝が夫を避けてると思い。
1年の1/3しか冥界にはいないから遠慮しないでと提案するが。
始皇帝の方は、現状の関係で満足しているので提案自体が端から論外で。
そうこうペルセポネと関わってる間に、ハデスに正妻との関係を疑われて釘を刺されるとか。
朕を愛していると一時は言った口で、愛しい正妻へと関わるなと警告を言い放つのかと。
ハデスからの視線で体に傷が浮かび、神の理不尽さに打ちひしがれる始皇帝とか。
ずっと目隠しを解いてもいいと、思えたはずの相手からの視線で身を灼かれ。
痛みを誤魔化すように朗らかな声で大いに冥界の王の発言に対し笑い。
その後、無問題といつものように王として振舞いながら。
二度と関わらない事を人は神へと誓う。
痛い、痛い、痛い。
それなりの距離感をようやく形成できたはずだったのに。
分不相応に神の愛を受け取ることなく、全てを諦めたのに。
何故これほどに、いともたやすく幸福な時は崩れていくのか。
――あぁ、痛い。
自室の寝台にて一人、体を丸めて人間は傷の痛みに耐えるが。
なおもまだ身を灼き浮かび上がり続ける神の悋気の証は消える気配もなく。
そのまま、気絶するように意識が遠のき人の王は眠りにつく。
実の所、それなりに始皇帝の方もハデスを愛してはいたとか。
人の王として存在するがゆえに愛へと溺れる事すらできず。
神の気まぐれなる愛など信じていいのかと躊躇し。
相手から捨てられることが酷く怖くて。
ただ、そばにいるだけで満足だったのだと。
すっかりと痛みを感じなくなった身体で、人は眠りから覚める。
感覚がバグって痛みを感じなくなった始皇帝とか。
痛みを知ることすら出来なくなった=人の痛みを知ることのできる最高の王ではない。
傷から、痛みから、一時でも逃げたいと思ってしまった事すら恥ずべき考えであり。
自分は『始皇帝』という最高の王でい続けなければ価値が無いというのに。
春燕との約束すら守れないのかと人の子は自己嫌悪し、己を戒める。
より一層、王という存在であり続けなければならないと。
個人としての願望など持つべきではなかったのだと。
全ては分不相応な自分が悪く。
これは罰に違いないと。
すでに神をもってしても救いようがないほどに話は拗れるが。
表面上は何事もないように、いつも通りという名の日常が流れ。
神が何もしなければ壊れる事はないが、いつまでも危険性は潜んだままで。
気付かないままにいる方が悲劇か、気付き想いをぶつけ合う方が正しいかは、不明。
この後の展開を考えるとするなら。
ペルセポネの方が始皇帝の変化に気付いて、ハデスへと知らせて。
多少強引な手ではあるが始皇帝から本音を聞き出そうとハデスは考えて。
途中、始皇帝が痛みを感じていない事に気付いて何故黙っていたのかと怒り。
無問題だといつもの調子で飄々と始皇帝が気にした様子もなく王として振舞うので。
痛みを知るからこそ最高の王だと言っていたはずだが?と皮肉気に言ってしまい。
やはり、痛みを感じられぬ朕では王としての価値はないか、と人間が零し。
たかがその程度で王として揺るぐなど神にとっては許せぬことで。
余が認めた王である貴様が、何故その程度のことで揺るぐのかと苛立ち。
ならば、王として存在するなと、いつまでも王として振舞う始皇帝の矛盾を指摘し。
今しがた己に王としての価値はないと決めつけたのは貴様の方だと、神は冷淡に考える。
神から始皇帝という存在の重要部分を否定されたが。
始皇帝はまだ王としてあり続けようとして、その事がなおハデスの苛立ちへと油を注ぎ。
見苦しいものだと、王ではない始皇帝を神は求める。
今まで強引な手段に出る事が無かったはずのハデスからの求めに。
互いに王として認めあい、対等な存在であったという前提の崩壊を覚え。
神の手から逃れようと始皇帝はもがくが、人間の抵抗など神にとっては些事で。
朕は王だと、王でいなければならないのだと、人の子は叫び。
王でなくなったとしても愛してやると神は告げる。
誰も一番には愛してくれない中、また不要だと捨てられたとしたら。
春燕と約束した王ですらなくなった自分にどれほどの価値があるのかと。
何もかもが分からなくなった人の子はハデスの言葉に知らずに抵抗を止め。
ただ、始皇帝という王として其方のそばにい続けたかったものだと、全てを諦める。
望まれたことを、望まれたままに。
神が望むのは、王としての自分ではなかったのだと。
人間と神の時間感覚の差は大きく異なり。
己の生前の一生分よりも長くハデスに愛され。
二度と関わらないと人が神へと誓った事は、正妻の要望により取り消されて久しく。
とある日の昼下がり、人の子はペルセポネと共に茶を飲み、たわいない会話を交わす。
痛みを感じることのなくなった身体は、いまだに治ることはない。
(2022/04/22)